今年7月、ジャカルタで5人が鳥インフルエンザに感染し3人が死亡した。その後シベリア、カザフスタン、モンゴルでも鶏が大量死。トルコでは七面鳥、ルーマニアではアヒルが急死し、原因は、2003年にアジア12カ国で66人の死者を出したH5N1型鳥インフルエンザと10月13日に確認された。 アジアからルーマニア、トルコへと家禽類の大量死が報じられるなかで、渡り鳥による鳥インフルエンザの伝播説が定着。渡り鳥はバルカンからイタリアを経て、またはロシアからドイツ、フランスを経てアフリカに下り、ヨーロッパに北上するのは来春ごろだろうと見られている。 渡り鳥の監視を強めるEU委員会は、加盟国25カ国に対しトルコ、ルーマニアからの家禽類の輸入禁止措置を発布。その数日後英国で南米ギアナから輸入したオウムが鳥インフルエンザで死亡したため、EU委はさらにEU以外からの生鳥の輸入を全面禁止。 同時にブスロー仏農業相は、渡り鳥が通過する仏東西部の湿地帯の多い26県の養鶏業者に対し放し飼いを禁止し、家禽を無窓鶏舎に閉じ込めるよう勧告している。パリではシテ島の鳥市が閉鎖され、市民は広場や公園にいる鳩は大丈夫? と不安顔。スーパーや肉屋の鶏肉の販売が20~30%減少し、5年前の狂牛パニックに近づきつつある。かつての牛の災難が鶏に回ってきたようだ。 10月26日、EU食品安全局は「鳥インフルエンザは鶏肉から人に感染した例は今のところ皆無だが、鶏肉はよく調理し生卵は避けるように」と勧告。その数時間後にEU委は「現在安全な製品のみが流通しているので生肉も生卵もなんら危険はない。両者ともよく調理すれば問題ない」と表明。両者の噛み合わない見解のどちらを信じていいのか市民は迷うばかり。鳥インフルエンザウイルスは70度で破壊されるといわれているのだが、鶏料理をメニューから削除するレストランや、マヨネーズなど生卵を使った食品を避ける消費者も出てきている。 仏政府は鳥インフルエンザ・ワクチンとして年内にスイスのロッシュ社製Tamifluを1400万回分と英国製のRelenzaを20万回分備蓄。来年初頭には2億個のマスクも確保する方針だ。各国のタミフルの大量注文に追い付けないロッシュ社は、同ワクチンの製造認可を他国にも与える意向だ。欧州に人から人に感染する新型インフルエンザが蔓延した場合、フランスだけで感染者900万~2100万人、死者は9万~50万人にのぼると予想されている。(君) |
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