ビル・マーレイの無表情…”Broken Flowers”

 夏休みが終わると週に10本以上の映画が封切られる。何を観ようか? と19スクリーンもあるシネコンの前にたたずむ。ぶすっとした無表情のビル・マーレイに惹かれて『Broken Flowers』へ。もち監督は一世を風靡したアメリカン・インディーズの旗手ジム・ジャームッシュだし、今年のカンヌでグランプリも受賞している。でもそんなことよりビル・マーレイが気になった。
 映画が始まって、彼はますます不機嫌そうというかツマラナそうなのである。同棲相手が「あんたは建設的じゃないからもういいわ」みたいなことを言って出て行っても動じない。足下に置かれた郵便物にも興味を示さない。が、ややあってローズ色の封書を開く。この1通の手紙がきっかけで話が動き出す。ドン(ビル・マーレイ)も、ずっと居座っていただだっ広い居間のカウチからやっと重い腰を上げて外に出る。この男、ハイテク事業で成功してとっとと引退。かつてドン・ファンだった彼はガールフレンドにはことかかなかったが結局は今も独身。友人といえば隣人のウィンストンだけ。ウィストンの方はドンと対照的に子だくさん。女房の尻に敷かれて慎ましくも幸せな家庭を営んでる。ドンは、ウィンストンにそそのかされて、ピンクの封書の謎を解くべく、飛行機とレンタカーを乗り継いで、かつての女巡りの旅へ…。
 5人の女(一人は墓の中)との再会は悲喜劇的で、ドンはますます虚無感いっぱいで帰宅する。この後もう一ひねりあるのだが、人生って虚しいなあって感じがどんどん募って行く映画だ。それが、あのビル・マーレイの無表情に集約されている。映画の間合いや歌謡曲に似たエチオピアのミュージシャンの音楽の入れ方が実にジャームッシュ! なのであるが、彼も52歳ということなのだ。(吉) 


DVD : L’Acrobate
 ジャン=ダニエル・ポレが1976年に撮った幻の喜劇がDVDになってリバイバル。
 主人公は町の風呂屋で働くレオン。背が低くさえない風貌で、惚れている娼婦フュメにも「男は、何か特別なものを持ってなくては魅力ゼロ」と突き放される日々。ところがある日、タンゴのコンクールに立ち会って目覚める。タンゴ教室の老カップルに励まされ、フュメがパートナーになることを引き受け、20区、イル・ド・フランス…の各コンクールで優勝していく。レオンを演じるクロード・メルキが素晴らしい。とぼけたような無表情、ユーモアをたたえた仕草、どこまでも映画的でネコのようなしなやかな動き、あっ、バスター・キートン! フランスにもこんなしゃれた喜劇映画もあったんだ、と大感激。(真)


 

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