Artichauts a la vinaigrette
アルティショー(アーティチョーク)は、大アザミのつぼみ。最初にこれを食べてみようとした人の勇気に、いつも感心してしまう。ブルターニュ産でカミュと呼ばれる、明るい緑色で赤ん坊の頭くらいはありそうな大きなもの、プロヴァンス産でヴィオレと呼ばれる、紫がかった小柄なものが八百屋に並んでいる。どちらも今が旬だ。
5年前には、ヴィオレを使った南仏風バリグールを紹介したから、今年は、大きなカミュをゆでてビネグレットソースで食べるという、いちばんシンプルな料理にした。
緑色が鮮やかで、フイユfeuille(葉)という部分がしっかり締まっていて、手に持ってみて重たいものを、4人なら4個買ってくる。
ざーざーと水洗いしてから、茎を根もとでポキリと折りとり、切り口が黒く変色しないようにレモンをすりこんでおく。
いちばん外側の固い葉を取りのぞいたり、葉先の1/4くらいを切り取ってしまう人もいるが、ボクは面倒なのでそのまま沸騰している大鍋に入れて塩ゆで。ゆで時間は大きさによるけれど、だいたい40分くらいが目安で、葉が抵抗なくむけるようになったらゆで上がりだ。
ゆでている間にビネグレットソースを準備。ボールにまずマスタードとビネガーを入れて塩、コショウし、よく混ぜ合わせる。ここへオリーブ油やヒマワリ油などを少しずつ加えながら、泡立て器で混ぜ合わせていく。最後に、みじんに切ったパセリやシブレットなど好みのハーブを混ぜ入れる。
ゆで上がったアルティショーは、ざるにとって水気を切り、中の水気が出るように葉先を下にして冷ますのだが、まだちょっと温かいという時がいちばんうまい。
葉先を上にして食卓に出し、一枚一枚の葉の付け根をソースにつけながらむしりとるようにして食べていくと、おいしいフォンfond(花托)が現れてくる。どこかクワイに似た味がなつかしい。(真)
アルティショー大4個、レモン、塩
ビネグレットソース:ビネガー大さじ3杯、オリーブ油大さじ9杯、マスタード大さじ半杯、好みのハーブ、塩、コショウム、塩、コショウ
●アルティショー artichaut
アルティショーはシチリア島原産といわれ、イタリア料理には欠かせない野菜だ。アルティショーが大好物だったカトリーヌ・ド・メディシスがフランスでの栽培を奨励した。鉄やカリウムに富み、利尿薬としても知られている。
生のアルティショーを何日間か保存したいときは、生け花のごとく、茎を水に漬けておくといい。煮たものは冷蔵庫で24時間保存できる。今回のように塩ゆでにしたり蒸したりしたものをビネグレットソースで食べるのが一般的だが、南仏産の小さなヴィオレはそのまま生で食べてもうまい。フォン(花托)は生のままを薄く切って天ぷらにするとうまい。下煮してからグラタンや炒め物にするのもおすすめだ。
●南仏風アルティショーのソテー
ジャガイモ3、4個を皮ごとちょっと固めにゆであげてから、皮をむいて適当に食べやすく切り分けておく。アルティショー大4個は、今回のレシピのようにゆでてから、葉と、ちくちくして食べられない繊毛foinを取りのぞいて、フォンだけを取り出し八つに切り分ける。ボールにジャガイモとアルティショーをとり、レモン1個分の搾り汁を振りかけ混ぜ合わせる。
フライパンにオリーブ油を大さじ2、3杯とり、みじんにきざんでおいたニンニク3片を加える。いい匂いが立ち昇ってきたら、ジャガイモとアルティショーを加え、たえずフライパンを動かしながら4、5分炒めていき、全体ににきれいな焼き色がついてきたらでき上がり。きざんだパセリをたっぷりと散らしましょう。
●ジャガイモは皮ごとゆでたい
サラダ用あるいはソテーする前に、ジャガイモを下煮するときは、皮ごとゆでたい。味がよくなるし栄養分も逃げにくい。ナイフを刺して持ち上げ、ジャガイモがすっと落ちるようになったらゆで上がっている。
●この道具はなあに?
この調理用の小道具を見せて友人たちに「なあに?」と聞いても、「??」と不思議な顔をされてしまう。
ジャガイモを皮ごとゆでて、その熱々のジャガイモの皮をむこうとする時に、これが大活躍する。ふつうはフォークを刺してその柄を持ちながらむいていくけれど、フォークの先は太いからゆでジャガがくずれてしまうこともある。この道具は先が極細だし、三角形状に刺さるように三つに分かれているから、ジャガイモが割れることなく安定よく刺さってくれ、面白いように皮がむけてしまう。ちょっとマニアックな単一機能の道具です。(真)