19世紀末から20世紀初頭にかけてウィーンで活躍したグスタフ・クリムト(1862-1918)の、エロチックな素描120点を見せる展覧会。 クリムトというと、金箔をちりばめた有名な『接吻』が思い出される。恍惚の表情で接吻する男女に豪華な装飾が加わった、優雅さに満ちた作品だ。油彩のクリムト作品では、愛も性も死も、豊かな色彩と絢爛たる装飾のベールで覆われている。 ところが、素描にはそれがない。この展覧会では、余分なものを取り払った、裸のクリムトを見せられたような気になる。 発表するためではなく、自分のために描いたとされるエロチックな素描群を見るのは、片付けられていない画家の寝室に足を踏み入れるようなものだ。クリムトのアトリエに入れる人たちは限られていて、素描は、一部の批評家や愛好家のあいだでしか知られていなかった。彼らは、クリムト作品の中でも、素描を一番評価していたという。 描かれているのは、交合する男女や、服をたくし上げて性器を露わにする女たち。同じポーズが、年月を経ても、繰り返し出てくる。モデルを使った素描と、想像で描いたものがある、と筆者は推測する。 顔と乳房と性器は、同等に描かれている。その他の部分は輪郭にしかすぎない。1913年頃の素描では、顔から「個」が消え、性器が画面の中心になっている。性器を覆う体毛が、装飾的な役割を果たしている素描もある。クリムトは、かなりリビドーの強い人で、女体や性に強烈な関心を持っていたことがうかがえる。実際、クリムトの女性関係は奔放だった。 しかしその一方で、素描からは、女を同等な存在と考えず、モノ的に捉えている、19世紀の古い男の観念も感じられる。 描かれた女たちは、目を閉じている。眠っているようでも、恍惚の表情のようでも、死んでいるようでもある。つかの間の快楽の中で、宙ぶらりんになっているような危うさがある。やせこけた頬の仮面のような顔は、ムンクの『叫び』を思わせる。クリムトの素描には、油彩よりも死の匂いが濃厚にある。(羽) |
Fondation Dina Vierny-Musee Maillol : |
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abcd la Galerie アール・ブリュットArt brutの小さなミュージアムがオープンした。ジャン・デュビュッフェが命名したアール・ブリュットとは<原生芸術>を意味し、幼児、精神疾患者、無名のアマチュアなどが他者を意識せずに創作した表現物のこと。本能的で理性の関与しない作品群だ。 主宰者は映像作家ブルーノ・ドゥシャルム氏。展示作品は彼が80年代から始めた約2000点のコレクションがベースとなっている。哲学と美術史を学んでいたころにデュビュッフェのアール・ブリュット・コレクションに出会い、映像作家として活躍するかたわらコレクションを充実させてきたが、この芸術への理解を一層深めようと、5年前に世界各国の専門家と共にアソシエーションを発足。関連書の出版、討論会の主催、展覧会の企画、ドキュメンタリーフィルム制作などを行ってきた。そしてこの3月にミュージアムを開館。極めて個人的だが同時に普遍的な作品を前に、誰もが心を引っ掻かれたようなうずきを感じることだろう。(仙)
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12 rue Voltaire 93100 Montreuil |
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●Philippe HIQUILY (1925-) 1950年代より金属の立体作品を作り続けるアーティスト。70-80年代制作のブロンズ彫刻と60-70年代制作の家具を、2つのギャラリーが同時に展示。4/30迄。 Galerie Patrice Trigano(ブロンズ作品): 4bis rue des Beaux-Arts 6e Galerie Yves Gastou(家具): 12 rue Bonaparte 6e ●Miguel CONDE (1939-) ●Victor Hugo dessin ●La poesie de l’encre-Tradition lettree en Coree ●Le Neo-impressionnisme, de Seurat a Paul Klee ●Bresil indien |
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