5年にわたっての紆余曲折を経て、2月25日、ようやく日仏2国間社会保障協定交渉が、パリで画期的突破口を見い出した。同協定は医療保険及び年金制度にわたるだけに交渉がいかに難航したか想像できる。が、同協定はすぐに施行されるわけではなく、憲法と同様に法的に両国の国会批准というもう一つの関門を通過しなければならない。よって同協定の施行は2006年以降とみるべきだろう。 この問題の発端は、日仏両国の、とくに自動車産業界企業が相互に進出を始めた前世紀末にさかのぼる。同業界の経営者らの要請が引き金となり、同協定により医療保険料の二重払いが免除されるようになり、老齢年金についても、居住国での滞在期間が5年未満なら現地での加入が免除されるはずだ。日仏での就労年数の計上に関してはいくつかの条件付きだが、両国での加入年数を合わせて、1国での加入年数にみあった給付額をその国から受けられるという。 具体的に日仏両国で保険料を払い込んできた人にとってどう変わるのか。たとえば、現在フランスで5年間加入し、日本で20年間加入していた人には日本からの給付金はゼロだが、フランスからはごく少額の年金が給付される。同協定により、2国での加入年数を合算することができるので合計25年、つまり日本での年金受給資格の最低年数となる。では日本からの給付額は?(日仏両国とも満額給付は40年間加入が必要)。日本での受給資格年数25年に達しているが、実際の加入年数は20年。上の例で算出するならば日本からの給付額は20/25に。同協定は、どちらかの国が年金を給付することを目的としていることから、上の例の場合、フランスからの給付金はなくなる。またはフランスで年金を受給する場合は、日本での加入年数がフランスでの加入年数に加算され、その年数にみあったフランスからの受給額が算出される。しかし両国の年金受給を保持したほうが有利な場合もあり、同協定は、どこまでも受給者に有利になる場合にのみ適用されるとみるべきだろう。 最後に同協定は労災も(まれだが)カバーするようになるのだが、同協定の交渉が難航したのはこの辺にあったとみられる。 日本が、多少の相違はあるがすでにこの種の2国間協定を結んだのは、独、英、米、韓、ベルギー。フランスは6番目(仏は約30カ国と協定を結んでいる)の国なのだ。 (ジャン=フランソワ・エスティエンヌ/ 訳:君) *当記事の原文は562号のフランス語頁に掲載 |
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