前号に掲載の新離婚法と並び見逃せないのは姓に関する改正法だ。中世からカトリック教に支えられた家父長制が根強かったフランスだが、家系を重視するがための姓の男女不平等性が欧州議会に白眼視されてきたため仏政府はついに姓の帰属性を解放。 今年1月1日以降の出生児には、父または母の姓、もしくは両人の名字(複合姓の場合は1つ選ぶ)を順序は自由にハイフンで連結して与えることができるのである。 今までは既婚者の子どもは自動的に父の姓を継ぎ、婚外出産(44%)でもほとんどの場合、父親が認知しその姓が与えられている(婚外出産で母親の姓だけをつけたい時は彼女が相手より先に出生届けを出す必要がある)。しかし、今までは母の姓をもつ子は、世間では父親に認知されなかった私生児として見られてきたようだ。 同法を新生児以外にも適用したい場合、13歳未満なら18カ月以内、来年6月までに申請できる。そして同じ両親の子どもたちは全員が同性になる。複合家庭が増えている今日、2つ並ぶ名字でどの母とどの父の子どもかがはっきりするわけだ。が、離婚後も先夫の姓を名のり続ける女性が多いが、父の姓をもつ子どもと社会的にも同姓によるつながりを保持するためなのだろう。 では2つの姓をもつ子どもが結婚する時はどうなるのだろう。結婚相手も同様に2つ名字が並んでいたとしたら…。合計4つの姓をハイフンでつなげるのは長すぎるわけで、2姓のうち1つを選び、新婚者の名字は1+1=2となり常に最高2つの姓が並ぶ。 ケベックでは同様に姓改正法が1981年から実施されているが、12月24日付の Le Monde紙の別冊に掲載の記事によると、施行直後は出生児に複合姓をつけたカップルは21%もいたのが、2002年には13%(母だけの姓は5%)にすぎないという。同国の婚外出産率は60%とフランスより高いのだが、子どもに2つの姓を与えるのは「面倒だ、ばかげてる」という意見が多いことと、腹を痛めることのない夫にせめて父としての「騎士の称号」を与えたい、別居や離婚後も父子関係が保たれるようにと子に父の姓を名のらせる母親が多いようだ。一方、男性は自分の姓を継がない子への父として責任感も薄れるということも確かだろう。 姓が神聖視されてきたフランスで、英・米国のように親の姓とは無関係の名字を子に与えられるようになるとは思えないが、姓を抜きにした親子関係について考える機会になるのではなかろうか。(君) |
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