自分史をアートに昇華。”Tarnation”

 ブッシュが再選されてしまった。アメリカのサイレンス・マジョリティーの意識の反映なのかと、またまた色々と考えさせられる選挙だった。マイケル・ムーア『華氏911』の奮闘及ばず、彼は落胆しているだろうが、きっとまた新しい素材で反撃に出てくるに違いない。彼の場合は、ドキュメンタリー映画をプロパガンダの道具にしている。政治が絡むドキュメンタリーはどうしてもそうなる。
 一方、10日に公開されたジョナサン・カウェット『Tarnation』は、記録映像(子供のころからスーパー8やビデオで撮っていた自分や家族の姿)を素材にした自分史ともいえるドキュメンタリー。だが、これは従来のドキュメンタリー映画の概念をはみ出して実験映画の世界に接近した詩的な作品。素材となる映像を編集し加工し、その上に音楽をのせ、自分史をアートに昇華している。シンドイ生い立ち、母の精神的破綻、J・カウェットは波瀾に満ちた半生を、映像を撮ることで乗り切った。それを告白する映像が今こういう形で甦ったのには、ハイテクの個人使用化という背景がある。彼はノート型パソコンで独りで映画を仕上げたのだ。映像を誰でも気軽に撮れる、それを料理するのも簡単な時代が到来して、これからの映画は、特にドキュメンタリーは新時代に突入していく。その一つの模範的な成功例が『Tarnation』だ。
 6月の公開以来ロングランしている中国のワン・ビン監督の『A l’ouest des rails / 鉄西区』にも、ドキュメンタリーの新局面を感じた。ハンディなDVカメラを携えた監督が、中国の工業化の拠点であった鉄西区、今時代から置き去りにされようとしているこの地域に居座り、徹底的に傍観者として住民を撮る! 上映時間9時間の引力は凄い!(吉)



 

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