couper la balle
テニスのねらいは、簡単にいえば、相手がボールをうまく返せないようにすることだ。そのために、各選手、秘術を尽くす。マイケル・チャンのごとく意表をついて “servir à la cuillère(匙ですくうような下手投げ風サービス)”、あるいはボレーを決めるために “monter au filet(ネットによじ登る→ネットダッシュ)”。”couper la balle(ボールを切る)”プレーヤーもいる。特に、こま切れにされたりしたボールを返すのは至難の業だ。おっと、これは冗談。そんな風にスライスされたボールは球すじが低くなり、逆に “lift(あっ、これは英語! トップスピンのこと)” なら、バウンドした後ボールは高く遠くへと弾むことになる。
pédaler en danseuse
ツール・ド・フランスはフォローできても、ファンたちの会話についていくのは大変だ。サドルにしっかりすがりついていないと、あっという間に振り落とされてしまいそう。選手は、山を登るときは “en danseuse(ダンサーのごとく)”、下るときは “la tête dans le guidon(ハンドルに頭を突っ込んで)”、平坦なロードでは、できたらの話だけれど “sucer la roue(車輪をなめる)”ように。でないと砂利をかむことになってしまう。
la balle papillon
フランスにはまだ野球のプロリーグはないけれど、野球好きのアマチュアたちはそれが待ちきれず、このスポーツの基礎的なテクニックのために、ありありと目に浮かぶようなフランス語表現を生み出した。”balle tombante(落ちる球→フォークボール)”、”balle courbe(曲線を描く球→カーブ)”、 “balle glissante(滑る球→スライダー)” などは簡単に想像がつくけれど、”balle tire-bouchon(栓抜き球)”や “balle papillon(チョウチョウ球)”などはちょっとコジツケ的表現で、はてな? 栓抜き球もカーブのことで、チョウチョウ球は水泳のバタフライ(nage papillon)とは関係なく、ピッチャーが投じた、ゆっくりすぎて球すじの定かでないボールのことだ。
バレーボールで “carotte(ニンジン)”は、アタックするような振りをしてジャンプすること。相手は当然スパイクに備えて動くことになるという、フェイントの一つ。口悪くいえばごまかし、意地悪でずるいテクニックのことだ。「ニンジン」は、ニンジンが大好きな “coup du lapin(ウサギのプレー→ずるがしこい人のプレー)”といってもいいだろう。