●Coming Apart ここはNY、ソファがー陣取るジョーのアパート。きょうも女の影がちらほら…。蒸発していく会話と煙草の煙と自堕落な愛撫が、固定された映像の中に淡々と映し出されていく。このカメラ、精神分析医の彼自身が備え付けたもののようだが、一体、何のため? “エロの年” 69年に撮影のアンダーグラウンドな匂いをまとった傑作が、フランスで今さらながらの初公開。監督はミルトン・モーゼス・ギンズバーグ。限りなくドキュメンタリー風なのに台詞は入念に用意され、主役もアクターズスタジオの俳優というのが面白い。この映画の中では、人の素顔も裸も奇妙でおかしく寂しいもののようだ。見終わった後の、この殺伐とした気分をどうしてくれようか?(瑞)
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●Cinema en plein air ヴィレット公園の芝生に野外無料映画上映会が戻ってきた。8月29日まで。見ごたえのある作品が日没後に上映される。主な作品を紹介(詳細はwww.villette.com参照)。 3日:遠い雷鳴(サタジット・レイ-1973)、4日:最後の晩餐(マルコ・フェレーリ-1973)、5日: Hole(ツァイ・ミンリャン-1998)、10日:鰯雲(成瀬巳喜男-1958)、11日:ブロンテ姉妹(アンドレ・テシネ-1979)、12日:オズの魔法使(ヴィクター・フレミング-1939)、18日:獣人(ジャン・ルノワール-1938)、21日:ディア・ハンター(マイケル・チミノ-1973)、25日:アンドレイ・ルブリョフ(アンドレイ・タルコフスキー-1967)、26日:愛のコリーダ(大島渚-1975)、27日:十戒(セシル・B デミル-1956)、27日:オープニング・ナイト(ジョン・カサヴェテス-1978)。 |
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●Just a kiss スコットランドに住むパキスタン人青年とアイルランド人音楽教師が恋に落ちる。人種、宗教の壁を前に、二人は運命に逆らう。社会派ケン・ローチらしいラブ・ストーリーだ。人種差別の感情が生まれる仕組みを、恋愛の行方を通して易しく示してくれる。ただし、美しすぎるラブシーンや主人公のルックスのせいか、いつものローチ作品が放つ圧倒的な厳しさはあまり感じなかった。それも狙いのうち?(瑞)
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●Head On ドイツとトルコを舞台に繰り広げられるトルコ人男女の悲恋物語は、ちょっと甘ったるすぎる。主役を演じるシベル・ケキリの新鮮な熱演が光るほかは、特筆すべきことはあまりない。それなのに、主人公男女と同じくトルコ系移民2世であるファティ・アーキンが監督したこの作品は、なぜか今年のベルリン映画祭でドイツに金熊賞をもたらしているのが少し不思議な気がした。(海) |
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Karin Viard 「人は私を見向きもしないと感じた。だから女優になりたかった。ナルシスティックに見えても、私にとっては絶対的な問題だった」。すでに15歳 で将来を決めていたカリン・ヴィアールは、年齢制限の壁を乗り越え、ルーアンのコンセルヴァトワールに入学。17歳で、夢を追ってパリへ。オーディションを受けては落ちる日々が続くが、1989年、映画『ダニエルばあちゃん』で端役を手に入れてから、道が開き始める。 93年、彼女にとって初めての大役を得た『La Nage indienne』で、セザールの新人女優賞にノミネート。このころから役探しの苦労はなくなるが、「頭の軽いひょうきん娘」というイメージから抜け出るのに苦労する。その後、乳ガンに冒された妊婦(『Haut les coeurs!』)や、虚言で身動きがとれなくなる失業者の妻(『L’emploi du temps』)など、多様な役柄に挑む。近作『Le Reve de sa vie』では、世話好きで控えめな映画スターの付き人に扮した。セザール常連の彼女だが、本年度も有力候補の予感。代表作に、『La Nouvelle Eve』(98)、『Reines d’un jour』(01)、『France Boutique』(02)など。今月公開のトーマ・ヴァンソン監督の新作『Je suis un assassin』では、殺人者の妻を演じているという。(瑞) |
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