クリストフ・ブロンダン・エストゥルネさん
クリストフさんは、刺激的な公演を数多く催すラ・ヴィレットで、サーカス、大道芸、マリオネットなどのプログラムを担当して4年になる。雑誌や大学でサーカス論を論じたりもする。「私の課題は、伝統が新しいものにどう組み込まれるかを見つめること」だという。
— ヌーボー・シルクとは何?
サーカスが、現代に生き残るために選んだ姿です。伝統的なサーカスとの違いをあげると、まず伝統的なサーカスが、7、8分の演目を順々に見せるものだったのに対し、ヌーボー・シルクは全体を貫くドラマツルギーがあることが多い。また動物はほとんど使われない。現在は、芝居やダンスの要素を取り入れた「スペクタクル・グローバル」と、ジョングラージュならそのテクニックだけを追うようなものの二極化の傾向がある。ある人は、「伝統的なサーカスは親が子どもを連れて見に来る。ヌーボー・シルクは子どもが親を連れて見に来る」と表現している。
— ヌーボー・シルクの誕生した背景は?
1968年の政治闘争を経て、70年代はまだ反抗的・アウトサイダー的な気分が残っていて、伝統的なサーカスが大切にしていた「家族・グループ」といったイデオロギーに異を唱える新しいサーカスが登場した。1973年には、現在も続くサーカス学校、アカデミー・フラテリーニが設立され、家族内での芸の伝授という伝統が崩れ、また70年代の石油ショックは、石油をたくさん使う伝統的なサーカスを衰退させた。そして80年代にはヌーボー・シルクという若い芽を、国が援助して、大きく育てた。
— ヌーボー・シルクの魅力を教えて下さい。
例えば、6月からラ・ヴィレットが主催する”terre de cirques”というフェスティバルの中で、トランポリンアーティスト、マチュラン・ボルズを呼んでいるが、彼は、トランポリン上でボトルを持っているのだけど、跳ね上がるたびに、ボトルに入った水を自由に移動させる。ボトルと水という日常的なものを使いながら、われわれの想像力を飛翔させ、非日常に誘ってくれる。
— お気に入りのアーティストは?
“cirque ici”のジョアンヌ・ルギレルム。彼の創り出す世界を形容するのはむずかしい。ひと言でいうとポエジー 。ラ・ヴィレットでは来年3月から4月にかけて彼の『Secret』が見られる。(瑞)
Terre de Cirques
今回で3度目、初夏のラ・ヴィレットのサーカスの祭典には、ヨーロッパ諸国を代表する20のカンパニーが集まる。サブタイトルは「サーカスを違った角度から見るためのフェスティバル」オープニングには、カミーユ・ボワテルら現代サーカス界を代表するアーティストらが、それぞれ10数分の持ち時間で、従来のサーカスのカタチを揺るがそうとする試み『Numero(s) Neuf(s)』。ほかにもバウハウスの影響を受けたスイスの若いアーティストMetzger/Zimmermann/De Perrot、サーカスと芝居の融合が楽しめるクリストフ・ユイスマンの作品が目玉。また”Cirque Desacoorde”、”Cie Non Nova” などの新作にも期待が高まる。6月1日~27日まで
火~土/19h、日/14h
14.50e~18e 2公演で25euros
Parc de la Villette : 211 av.Jean Jaures 19e
01.4003.7575 M。Porte de Pantin
www.villette.com