Bar marine aux herbes
地中海に面した地方では、その性格がどう猛なせいかloup(オオカミ)と呼ばれるスズキ。最近は養殖ものが魚屋の店頭に並び、香りは少々欠けるが、キロ15ユーロ前後と以前よりは安くなった。なんといっても粗塩を振って焼き上げるのがいちばん。マルセイユでは、魚の活きを大切にするためか、あるいは身がくずれないようにというためか、ウロコもとらずに焼いてしまう。フランス人は皮を食べないからこれでいいのかな? 今回は南仏風にマリネです。
養殖ものは一尾が300グラムから400グラムくらい。前菜なので、4人分として2尾で十分だ。面倒な人は魚屋さんに3枚におろしてもらいましょう。
三枚におろしたら、汚れと小骨をとりのぞき、両面に塩を振る。バットや大皿に粗塩を敷き、その上に魚をのせ、1時間くらいおいておく。
身がしまったころだろう。冷水にさっとくぐらせて塩気をとり、クッキングペーパーなどで水気をよくとる。刷毛を使って両面にオリーブ油を塗り、みじんに切った好みの香草をまぶしつける。香草は、シーズンだったらバジリコがいちばんだが、セルフイユ、シブレット、エストラゴンなどをミックスしたものも面白いだろう。日本だったらシソの香りも素晴らしい。冷蔵庫に入れて1、2時間寝かせます。
大皿にレタスを敷き、せん切りにしてからドレッシングで和えたニンジン、セロリ、タマネギなどをたっぷりと盛りつけ、薄くそぎ切りにしたスズキを並べていく。その上からレモンを搾りかければできあがりだ。好みでは中華食料品店で売られているプラムソースをベースにした甘酸っぱいドレッシングを作って振りかけてもおいしいものだ。
魚は、白身ならタイdaurade、ヒラメturbot、太刀魚sabreなどでも、おいしくできる。ワインはきりっとした辛口のムスカデがいいでしょう。(真)
●塩は三種類備えたい。
料理に欠かせない塩だが、粗塩gros sel、精製塩sel fin、塩の華fleur de selと三種類備えておいて、場合によって使い分けるのがいい。
粗塩は、白いものより、ミネラルなどの混入物を多く含んだ灰色のものsel grisの方が味がいい。野菜や魚介類を塩ゆでするときに使ったり、魚を焼くときに飾り塩として振りかけたりしたい。ポトフに添えるのもこの粗塩。湿気を吸収しやすいので、きちんとフタができる容器に入れて乾燥したところに保存したい。
精製塩は、調理一般に便利。粗塩でもいいのだが入れる加減がむずかしい。
塩の華は、塩田の水面で最初に結晶するものをすくい取ったもので、塩味は優しく風味豊か。食卓に出しておき、でき上がった料理に、塩加減が足りないというような時に少々振りかける。高いものなので、塩ゆでするときに使ったりするのはもったいない。
●poissons plats
ヒラメ、カレイ類に属する魚は、その形からpoissons plats(平たい魚)と呼ばれている。poissons platsの王者といえばやっぱりヒラメturbot。2キロから4キロくらいのヒラメが魚屋で威風堂々! さすがに値段も張ってキロ25ユーロ前後です。グリルしたり、ソテーしたり、牛乳を加えたクール・ブイヨンでポシェしてからさまざまなソースと組み合わせたりと、繊細な風味の締まった白身を味わい尽くしたい。もちろん刺身も素晴らしい。火を通しすぎないこと! 味が落ちるし、身もモサッとしてしまう。ヒラメを丸ごとポシェするための専用鍋はturbotièreという。小さめのヒラメはturbotinと呼ばれ、値段は安め。
ヒラメの弟分はあごに小さなひげをたくわえているbarbue。オヒョウの親戚らしい。ポシェしてからクリームソースということが多い。
ヒラメの次の人気者は舌ビラメsole。北海で捕獲され、ムニエルが名高い。これもキロ15ユーロと高級魚です。
poissons platsの中でいちばん手ごろなのがcarreletと呼ばれるカレイ。キロ7ユーロ前後。おろし身をフライにするとうまい。ちょっとかみごたえがあるけれど、刺身だって悪くない。
やはり北海で獲れるカレイがlimandeで、これもなかなか繊細な風味。小さいものが手に入ったら、軽く塩をして二日ほど干してから焼くとうまい! 縁側のところも忘れずに食べましょう。
poissons platsは魚屋に頼むと、couteau à filets de soleという先のとがったしなやかな小包丁でみごとにさばいてくれる。重量の半分くらいにあたる中骨や頭も忘れずにもらってきて、フュメ・ド・ポワソンというダシを作りたい。