二つの大学改革案に対して11月5日、ブルターニュのレンヌ第2大学の左翼系学生組合UNEF他、数組合の学生を中心にストとデモの火の手があがった。3週間後の11月末には全国84大学のうち20余りの大学に波及、11月27日に全国デモ。リヨン、ストラスブール他、地方都市で数千人が、パリでは、とくに郊外のナンテール大学やヴィルタヌーズ/ボビニー大学の文科系の学生を中心に約6千人が、改革案の撤回を叫び抗議デモ。長期戦のストライキのピケが張られる校舎が続出。 新学期早々、フェリー教育相がよくばって二つの改革案を発表したのがドジだったよう。そのうちの「大学の自治化」構想は大学の私学化を促し、学費の値上げやバカロレア資格のほかに入試を行う大学が増え、大学間の競争がさらに強まるのではと、米国式大学のように大学の「商品化」を恐れる学生たちは同案に強く反対するのである。孤軍奮闘のフェリー教育相は、これらの声を左翼系学生があおる抗議とみなしながらも、学生たちの怒りの渦に巻き込まれることを恐れてか、この案は当分お蔵入りにしたようだ。 もう一つの改革案「EU諸国の大学の学位均一化」(ECTS: European Credit Transfer System) 構想はすでに1989年に発し、その協定に1999年当時のアレーグル教育相が署名している。このシステムは、イタリアの大学では3年前から、フランスでもすでに15余りの大学で実施されているのである。 EU共通の学位 “LMD”とは、Licence (学士3年) – Mastere (修士2年) – Doctorat (博士課程3年)と、通算3-5-8年の履修となる。L=180単位、M=120単位、D=180単位と、1年につき60単位が必要。そして学士課程では専攻以外の科目も選べ、それらが履修単位に換算される。学位はEU32カ国共通なので、課程途中にある年はベルリンで、翌年はブリュッセルで、と国内外の大学への移籍も可能になる。 が、現行の第1課程(DEUG/DUT 2年)や第2課程(Licence3年目/Maîtrise4年目)はどうなるのか、新しい学位(L)や(M)よりランクが下がるのだろうか。また学生にとって地方から都会の大学に登録するだけでも生活・住居費の面で苦しく、多くの者がファーストフード店でのバイトやベビーシッターをして学業を続けているのが現状だ。新制度は経済的保証がともなわないかぎり金持ちの子息だけが利用できる米国の大学と同じではないか。まず国内の奨学金(年1500ロ)と住居手当を引き上げることのほうが切実なのだ、と学生たちは現実の問題をフェリー教育相に突きつけるのである。 経済・社会・文化面でグローバリゼーションが浸透する今日、教育省高等教育モンテイユ部長が「LMD制度は、高等教育における米大学の支配に抗するための唯一の手段である」と主張しているように、フランスの大学のカビ臭い各学部の厚い壁を解体し、EU諸国の大学が均一となる必要性はだれもが認めている。が、学生にも、教授、研究者にもそれに先立つものがまず必要なのだろう。(君) |
フランスの大学生 |