秋、胸が痛むような作品が多い。

 現在公開中の作品からおすすめを紹介。まずは必見の『Janis et John』。あの世から蘇ったジョン・レノンとジャニス・ジョプリンに扮し、遺産相続した男からお金を騙しとろうする奇想天外な物語。コメディとはいえ、現代社会が置き去りにしたようなジャン=ルイ・トランティニャン演じる人恋しげなおじさまや、平和のための歌を録音するという時代錯誤的発想が、ちょっぴり切なく映ってもくる。さらに実生活で元夫だった監督が焼きつけた故マリー・トランティニャン(8月に急死)のライブシーンがやけに美しく、彼女の輝きばかりが痛ましく迫ってくるのだ。
 お次はアメリカの高校で起きた銃による大量殺人事件が下敷きの『Elephant』。事件の瞬間までの学生たちの後ろ姿を、亡霊のようなカメラが淡々と追う。パズルのように組み合わされ差し出される映像は、無味乾燥としていながらも妙に生々しい。監督は、本国でブーイングを受けつつもロカルノ映画祭で激賞されたフランス未公開の前作『Gerry』に続き、本作でついにカンヌの大賞を受賞したガス・ヴァン・サント。近ごろ彼を励ましているのは、アメリカではなくもっぱらヨーロッパの観客のようだ。
 最後にクリント・イーストウッドの最新作『Mystic River』。幼なじみだった3人の男が、殺人事件を介し皮肉な巡り合わせをする濃密な刑事ドラマ。職人系大御所監督の嫌味なくらい隙のない演出の前に、ただただ息のみ平伏すのみ。しかし本作を筆頭に最近観た新作は、もの思う秋に相応しく、ペシミストな視点か、もしくは胸が痛むような作品が多かった。
 11月公開作品は、北野武『座頭市』(5日公開)、コーエン兄弟『Intolerable cruelty』(19日公開)、タランティーノ『Kill Bill』(26日公開)など、こちらは、もっと理屈抜きで楽しめそう。(瑞)

ガス・ヴァン・サント監督『Elephant』


EXPO
● Gerard Philipe
 演劇に映画に、ジェラール・フィリップは全力で挑み、そして37歳という若さでこの世を去った。こうしてみると、ジェラール・フィリップはやはり演劇の役者、しかも彼自身が「精神の父」と仰いだ演出家ジャン・ヴィラールから多大なる影響を受けていることがわかる。昼間は映画撮影、夜は舞台出演と超多忙なスケジュールをこなす役者の顔の裏には、家庭を大切にする一人の男がいた。それほど広くないスペースにぎっしりと詰め込まれた(見づらいのが残念)彼の功績と思い出から、20年足らずの活動で彼が世界のジェラール・フィリップとなった理由が少しわかったような気がする。(海)

*国立図書館(リシュリュー館) : 58 rue de Richelieu 2e
1月25日迄(月・祝休)

 

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