アラブ系移民の2世、生きるのは大変だ。 “Vivre me tue”

 『ナショナル7』(00) を観た人は少なかったかも知れない。障害者の(特に性的な)権利というデリケートな題材を、中途半端な同情や偽善に陥らずに痛快に描いて非常に好感のもてた佳作だった。その監督、ジャン=ピエール・シナピの長編2作目、『Vivre me tue』は強い絆で結ばれたスマイル兄弟の話。スマイルという姓が示す通り彼らはアラブ系移民の2世代目、だが名はポール(サミ・ブアジア)とダニエル(ジャリル・レスペール)と、フランス人している。この姓名が、二人の青年が『生きるのは大変(原題の下手な邦訳)』であることを象徴している。モロッコから来た父は、鉄道員として真面目な一生を勤め上げた。兄のポールは
『白鯨』で論文を書いたというインテリだが、ちゃんとした就職口がないままピザの配達で生計を立てている。弟のダニエルはボディービルで世界チャンピオンになることを夢見て薬剤摂取も否まない。そんな実直、不器用さが憎めない弟のことを兄はとても気にかけている…。何かから抜け出そうとしてつまずいてしまうダニエルの生き方が哀しい。それを見守るポールの優しさが痛い。さらっと二人の生き様を描写しているだけなのに、映画が進むに連れて胸がキュンとしてくる。
 主演男優二人とポールの恋人を演じるシルヴィー・テスチュがとっても良い。シナピ監督は『ナショナル7』の時のオリヴィエ・グルメ他の配役も冴えていた。役者の使い方が上手い! 彼には、F・オゾンのような才気走ったところはないけれど、確かな目(思想)と腕(演出力)を持った信頼できる監督だ。これからのフランス映画界の重要な柱になっていくと思う。ジャン=ピエール・シナピという監督の名前をしっかり記憶しよう。(吉)


 

パスワードをお忘れの場合、OVNINAVI.COMに登録したE-mailアドレスにパスワードをお送りします。登録E-mailアドレスを入力してください。


戻る