今年95歳、写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンの回顧展がミッテラン国立図書館で開催されている。約250点の写真と、彼が生きた時代とその軌跡を伝える資料が多く展示され、ひとりの人間としての”カルティエ=ブレッソン” が浮かび上がる。 1908年、裕福な繊維工場主の家庭に生まれるが、リセ時代からシュルレアリスムと絵画に興味を持ち、キュビスム画家アンドレ・ロートのもとで絵画を学ぶ。青年時代に身に付けたフォルムの感覚は、彼の写真にいつまでも影響を与えることになる。 自分のいる環境から違う世界に生きようと、1931年コートジボワールへ。1年暮らしたこの場所で彼は本格的に写真を撮り始めた。その後ヨーロッパ、メキシコ、アメリカを旅してはシャッターを切り続ける。「写真は私が望む生き方へ導いてくれた。世界に大きな好奇心を抱いていたその頃、いつ写真を撮ろうかなど考えなかった。生きることを考えていたんだ*」。もっと自由に、もっと遠くへ。好奇心に満ちた1930年代のカルティエ=ブレッソンの写真は瑞々しい。 戦時中はドイツ軍の捕虜になるが、脱走。戦後1947年には、キャパ、セイムアらの仲間と写真エージェント〈マグナム・フォト〉を創設した。当時としては画期的な報道機関と写真家の仲介役〈マグナム〉は、写真家が自由な立場で仕事ができる環境をつくった。ここをベースにカルティエ=ブレッソンは再び世界に飛び立ち、毛沢東政権確立、ガンジーの葬儀、インドネシア独立など、数々の素晴らしいルポルタージュを残している。 1966年インドのルポルタージュを最後に第一線を退き、1974年からは絵に専念しているアンリ・カルティエ=ブレッソン。彼が駆け抜けた20世紀の世界の「決定的瞬間」。歩き、生き、感じ、見、シャッターを切る。彼の生き方そのものだ。(仙) *Le Monde 4月28日付インタビューから。
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*ミッテラン国立図書館(halle Est): 11 quai Francois-Mauriac 13e 7月27日迄(月休) *4月末にFondation Henri Cartier-Bressonがオープンした。カルティエ=ブレッソンが選んだ85人の写真家の作品展が開催中。 2 impasse Lebouis 14e(日月休) |
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L’aventure de Pont-Aven et Gauguin ゴーギャンの没後100年記念として、彼のブルターニュ滞在を回想する展覧会が催されている。未開の土地を求めてブルターニュに行ったゴーギャンが、地球から生じる力からどのような霊感を得て、絵の革新を遂げていったのかを見ることができるだけでなく、その絵の探求を分かち合った「ポン=タヴェン派の画家たちの冒険」にも触れることができる。 その当時のブルターニュは、まだ工場は少なく観光産業も発達していず、人々は素朴な生活をしていて、画家たちにエキゾチックな印象を与えた。 ゴーギャンはタヒチに移住する前の1886年から1895年にかけて何度もブルターニュに出かけ、初めはポン=タヴェン、その後、そこから遠くないル・ブールジュの安下宿に滞在。ポン=タヴェンで、初期の印象派風から離れて、理知的な画面構成と装飾的色彩を調和させていて、ゴーギャンは、モチーフを輪郭線で囲んでいたエミール・ベルナールとともに、1887年に総合主義を生み出した。それは象徴主義的な主題の選択、奥行きを軽視した構図、太い輪郭線による装飾的な画風が特徴だった。当時40歳の背が高く堂々としたゴーギャンは、周囲にいた20人くらいの若い画家たちに、総合主義の手ほどきをしてポン=タヴェン派を生み出したのだ。(ニコル)
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シャルル・フィリジェ “Paysage Poldu” 1892 *Musee du Luxembourg: 19 rue de Vaugirard 6e 6月22日迄 |
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●<La parole opere l’espace> 劇作家ヴァレール・ノヴァリーナが選んだアントナン・アルトー、ジャン・デュビュッフェ、ヨゼフ・ボイス、アルヌルフ・ライナー、ルイーズ・ブルジョワなど20人のアーティストの60点の作品。6/9迄 ポンピドゥセンター(火休) ●<Ils nous regardent> ●<Le songe d’une nuit d’ete> ●Alain ARIAS-MISSON(1936-) ●<Figures de l’ombre> ●<Animation en mouvement> Institut neerlandais: 121 rue de Lille 7e ●Andre DERAIN(1880-1954) ●Manuel AMORIM(1950-) ●<Yanomami, l’esprit de la foret> |
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