5月以来くり返される全国デモで黒衣をまとった教員がかなりいたが、公教育の ”喪”に服すことを表していたのだろう。 彼らは、フィヨン社会問題相草案の国家公務員の年金制度改革案にも強く反対している。3月以来、幼稚園から高校まで断続的な教職員ストが、交通機関職員の山猫ストと重なり、子どもや父兄、一般市民も公務員ストの巻き添えをくっている。学期末試験が延期された学部もあり、高校の教師らは6月のバカロレア試験もボイコットしかねない形勢だ。 教職員たちのかつてない蜂起の背景には、公務員を対象とした年金特別制度改革案のほかに、ラファラン政権の主要改革である地方分権化と緊縮政策が横たわっている。教職員たちはこれらの苦い薬を一度にのませられることに必死で抵抗し、政府との真剣勝負も辞さない覚悟だ。 地方分権化政策として、教育界では教職員約122万人のうち職員や進路指導員、校医、カウンセラー、看護婦など約10万人が国家公務員から地方公務員に移行する。しかし地方自治体は国から押しつけられるこれらの職員をはたして従来どおり校内の職務に就かせるのか、地方自治体に彼らの人件費を捻出するだけの経済的余裕があるのか、将来、これらの職務が学校から消えてなくなるのでは、と公教育への危機感が高まっている。そして教師らは校内暴力の被害者として、また手におえない生徒らに侮られる日常的ストレスが怒りとなって噴き出したのでは。 さらにフェリー教育相の発表によれば、03年度からは自習監督5600人を削減し、指導補助員2万人の契約も更新しない代わりに、教育補助員1万6000人を新採用するという。校内暴力の防止と若年雇用促進のため、98年に前左派政権が新設した指導補助員がいなくなるわけである。 学校職員の地方分権化にしろ、指導補助員の廃止にしろ、教職員らはラファラン内閣がすすめる緊縮政策の一環とみなす。事実、ラファラン首相はマーストリヒト条約の国内総生産(GDP)比3%以下の赤字許容規定に従い、現在の3.5%から2.9%に下げると確約し、各省に定年退職者数の半数を採用すべしと通達。従って04年以降は公務員の定年退職者約6万人に対し3万人しか採用せず、10年後には現在数の25%にあたる50万人が削減される。ちなみに現在、国家予算総額2700億ユーロの44%が公務員給与と年金に費やされており、このままだと2040年には歳出の90%(!)を占めるようになるという。 5月16日、政府、労組、経営者団体との同改革案をめぐる激しい攻防戦後、19種の妥協案が出された。例えば、SMIC所得者の年金給付率は最終給与の75%から85%に上げ、14、15歳からの就労者は42年加入後、56~57歳で定年退職可。2013年より官民とも不足加入年の減額率は5%に統一。不足加入年は3年まで買取りが可能に。これらの妥協案に社会党系CFDTとCGC(幹部総同盟)、経営者団体は同意したが、共産党系CGTと他の労組は妥協案にもひじてつを食らわせた。 彼らは5月19日、25日と教職員らを先頭に、政府に改革案の撤回をせまる大規模な全国デモをくり返し、ラファラン内閣を窮地に追い込んでいる。 (君) |
教職員1 221 000人 (就労人口の4.4%) |