世界中で1000万人以上の市民がイラク攻撃に反対しようが、イラクの大量破壊兵器武装解除の査察継続派、仏独が戦争回避路線で国際世論を二分させようが、ロシア、中国も仏同様、安保理でイラク侵攻への拒否権をかざそうが、ブッシュ大統領はまったく聞く耳をもたないよう。 決議1441(昨年11月採択)が与えた「最後の機会」をイラクは逃したとか「ゲームは終わった」とか、査察委員会の報告やフランスが絶えず横槍を入れる安保理の決議にしびれを切らしたように見せながら、これらすべてはブッシュ大統領が妄想する、サダム・フセイン大統領転覆後の中東再編成戦略に導くための茶番としかとってないのでは。それに仏独の平和的解決論なんて「古い欧州」のたわごとと一笑に付しているようだし…。 2月26日、ブッシュ大統領が明かしたフセイン大統領打倒後の構想によれば、イラク侵攻は中東再編成への助走にすぎないことがわかるのだ。まず独裁者からイラク国民を解放し、敗戦後のドイツと日本に米国が民主主義を課したようにイラクに(アメリカン)デモクラシーを移植すれば民主国家の見本となり、イスラム・テロリズムの温床国イランやサウジアラビアなどのイスラム独裁制からも国民を解放でき民主化が広まっていくだろう。パレスチナのテロリストたちを援助してきたフセイン大統領がいなくなれば一石二鳥、パレスチナ国家設立に向けての道も開かれるだろうと、絵に描いたような新メソポタミア再編成構想なのである。 ソ連崩壊後、恐いもの知らずの米政府はイラク攻撃をめぐり、まず北大西洋条約機構(NATO)の新参国ポーランドやハンガリー、チェコに米軍事・経済力をふりかざし米傘下に誘い込んだ。そして仏・独・ベルギーにイラク侵攻時の防衛協力を拒否されたトルコは、巨額の経済援助(300億ドル)と引き換えに米側につき(3月1日、トルコ国会は米軍駐留を認める政府案を拒否したが)、NATOも分裂状態に。 EU内もイラク攻撃の片棒を担ぐ英・スペイン・伊に加え、東欧新加盟国(ブルガリア、スロベニア、スロバキア、バルト3国)も仏独を見捨てて米側につき、EUも抜け殻同然に。さらに安保理非常任理事国チリ、パキスタン、ギニア、カメルーン、アンゴラなどに米政府は経済援助をエサにイラク侵攻賛成票の買収作戦に出たという噂も聞かれる。武力行使には15理事国中、9カ国の承認が必要だが、イラク攻撃とイスラム・テロリスト退治を神聖な使命と考えているブッシュ大統領には、安保理の採決ももはや空儀式でしかないのでは。 ブッシュ大統領は、イラク陥落後の中東再編成前に、NATOもEUも国連も安保理もなきにひとしい存在にし、単独で武力行使に出かねない”無法”超大国になりつつあるわけだ。そんな超大国に刃向かうものなら、フランスからはワインもチーズもボイコットし経済的に干してやる、と米政府は仏排斥政策でフランスを孤立させることもできる。「古い欧州」の生き残り、フランスが世界を牛耳る米帝国主義にどこまで抗していけるか。(君) |
シラク大統領の反戦姿勢をどうみるか。 *Louis-Harris-AOL-Libération が2月14~15日、
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