女性詩人の詩を歌い続けて26年…。

 吉岡しげ美さんは、反戦、生命、愛をテーマに、作曲とコンサート活動を行う音楽家だ。まだ社会が男性中心に回っていた70年代後半に、仕事、結婚と人生の岐路に立たされていた20代の吉岡さん。迷える自分の思いを詩に描けたらと思ったが上手くいかず、そのうちに自らの思いを代弁し、勇気を与えてくれるような女性詩人や歌人の作品世界に深く入り込んでゆく。
 「例えば、茨木のり子は〈自分の価値基準で生きよ〉、与謝野晶子は〈人は多面性を抱えながら生きる〉、金子みすゞは〈物事の一面性だけ見ていてはだめ〉と語りかけてくれました」。ストレートに響いてくる女性詩人の言葉に耳を澄まし、曲をつけて歌うこと。以後吉岡さんが最も情熱を注ぐ壮大なライフワークとなっていった。「彼女たちの言葉は生命を慈しむ気持ちに溢れています。
これまで人生の節目ごとに新たな詩人の作品と出会ってきて、私も人として、女として成長してきたのだと思います。26年目となるこの活動の中で生まれた500の作曲作品は、等身大の私の人生そのものかもしれません」
 吉岡さんは日本はもとよりアメリカ、アジア、ヨーロッパと、世界各地でコンサート活動を行ってきたが、海外の方が詩の内容を身近な問題として受け止めてくれると感じる時があるという。「アメリカで、茨木のり子の『わたしが一番きれいだったとき』、与謝野晶子の『君死にたまふことなかれ』などの反戦詩を歌った時、ベトナム戦争で兄弟を亡くしたという黒人女性が涙を流していました。この時、ああ、歌っていてよかったと、しみじみ思いました」             
 今月、吉岡さんのコンサート*が、久々にパリで開催される。「お客様にこのコンサートが新たな日本との出会いになればと願っています」(瑞)

*22日20時半~ 一般12€/割引9€/学生7€
日本文化会館 : 101 bis quai Branly 15e
予約 : 01.4437.9595