● Daniel Lindenberg『Le rappel a l’ordre : enquete sur les nouveaux reactionnaires』
11月始めからフランス知識人の間に論争を巻き起こしているこのパンフレットは、現代フランスにおける思想の変動—マンハッタンの9・11事件やフランスの4月21日(大統領選)など、現実が空想と思想を越える現代において、変わることを余儀なくされている思想、そして68年やフェミニズム運動、人権、さらには民主主義という既存の価値に問題提起を投げかける現代思想の動き—を捉えようとする試み。その正確さはともかくとして、現代フランス思想の混乱状態を明らかにしている点では本書は読むに値する。
-Seuil, coll. “la republique des idees”, nov. 2002,
96p., 10.50€
●Mutsumi Tsuda『Divergences : d’Hiroshima a Los Alamos』
フランスでの3年間の滞在中に母親から送られた祖父の写真がきっかけで始まった津田睦美の問いかけ。それは、戦争の記憶と考察。特高の幹部であった祖父と「原爆の父」オッペンハイマー、原爆の投下地、広島と最初の原爆実験地ロス・アラモス、広島の原爆記念館とルーヴル美術館などの並立を通じてそれがみられる。
-Blusson, 2002, 40p., 18.30€(英語・仏語)
●バルト、バルト、バルト。
11月27日から始まり来年3月10日までポンピドゥーセンターで開催されているロラン・バルト展と平行して様々な新規出版や再版がある。その中でも講義ノートを編集した
『Comment vivre ensemble』と『Le Neutre』(Seuil/IMEC, 各22ロ、MP3フォーマットのCDがそれぞれ30, 45€)、そして再編集されコンパクトで手頃な値段になった全集(Seuil, 全5巻、各23€)、そしてバルト展のカタログ『R/B Roland Barthes』(Seuil /IMEC/Centre Pompidou, 256p., 32€)はお勧め。(樫)
●Munoz&Sampayo『Dans les Bars』
『探偵アレック・シナー』シリーズなどで、都会の夜の欲望と暴力をみごとにとらえたコミックス作家、ミュニョスとサンパヨのコンビによる新作。バーに寄り集る狂気すれすれの人間たちの生きざまが、白黒のコントラスト鮮やかなタッチ、ひし曲げられたようなアングル、現在と過去が錯綜するセリフ…などによって描写されていく。(真)
-Casterman, 12.50€