社会派を越えた青春ポートレート。 “Sweet sixteen”

 イギリスの名匠、ケン・ローチの映画はいつも非の打ち所がない。労働者階級を見つめる揺るぎなき視点。観客を引き込んで放さない物語構成。そして役者の演技を超えた真に迫る存在感。決して裏切られることのない、安心して観に行ける良質ブランドだ。その彼の実に26作目の長編劇映画が『SWEET SIXTEEN』。
 リアムはもうすぐ16歳になる、いってしまえば不良少年。家庭環境からすれば致し方ない。母は服役中。その母の連れ合いは麻薬のディーラー。刑務所の訪問日にクスリを差し入れ、母がそれを仲間に売って商売にしている。祖父も共犯者だ。母想いのリアムは、その有様に反発を覚える。無事に母に刑期を終えて欲しい。シングルマザーの姉とその息子と母と自分、4人の新生活、人並みの家庭を夢みる。その実現のために彼は一念発起し、親友を道連れに祖父の家から麻薬のストックを盗み出すことに成功して、それを売りさばく。金持ちになって、この環境から抜け出すのだ…。しかし物事は、そう簡単には運ばない。業界(?)を操るビッグボスの手が彼に伸びる。お眼鏡にかなったリアムはある意味でたくましく成長していくのだが、それは一方で親友との別離を招く…。夢の実現が信念となったリアムは何でもする。そして母を迎える新居を手にする。待ちに待った母の出所。しかし母の反応は意外にも…。
 微妙な年ごろの男の子のナイーヴで一途な思い入れと大人の現実、その落差を描いた本作は、いつもの社会派を越えた普遍的な青春ポートレート。胸が痛い。(吉)