私たちの多くは、美しいアフリカ彫刻に強烈に惹き付けられているにもかかわらず、その役割や意味などほとんど知らずに通り過ぎている。実はアフリカ彫刻のほとんどは、儀式のためにつくられている。 コンゴのンベベ族は村が滅びないように、首長が亡くなるとその爪を抜く。爪は過去に亡くなった王や権力者たちの頭蓋骨や背骨、皮膚などとともに、聖遺物となる。ほかの多くの部族でも同様に聖遺物があり、それは、祭祀の際に祖先や死の世界と生の世界を結び付ける重要なものとして、大切に保管されている。コンゴやガボンに住む多くの部族は、聖遺物を篭に入れて保管している。篭の上部には、様式・素材のバラエティに富む彫刻が取り付けられている。一方、ガボンの一部、カメルーン、赤道ギニアの南部に住むファン族は、箱に入れて保管している。箱の上にはやはり像が取り付けられ、角や盃を持ち、中に聖遺物を保護する薬を入れている。扉の付いた彫刻の中に入れている部族もある。この彫刻は超自然的な力を持つと信じられ、通過儀礼の儀式には不可欠な存在だという。 バングワ族の表情豊かな面「トロ」は、ある王の死の嘆きを表している。それは、ひとりの王が亡くなった後に未来の王を捕まえるという儀式と、新しい王が部族の秘密や規則を習得するために9カ月間監禁されるという儀式のために使われている。コートジボワール、マリ、コンゴに住む、ダン族、ウェ族、ドゴン族、バンバラ族の面は、神話の登場人物を表し、それぞれが特有の歌や踊りに結びついている。成人になる通過儀礼では、若者の各々が違う面とともに儀式を終えるのだという。またそれらは、部族の昔話や天地創造のエピソードを語る時にも活躍する。面の保管場所はほとんどの場合、通過儀礼を終えた者だけが入ることのできる秘密の所にあるが、ドゴン族は「ヤシジン」と呼ばれる面の姉妹だという女性だけが、面に近付けるのだという。 この展覧会を追ううちに、アフリカ彫刻の本来の姿を知ることができたような気がする。(ヤン) |
Musee Dapper : 35 rue Paul Valery 16e 7/21日迄(月火休)
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Robert Rauschenberg展
多様な表現方法で作品を制作し続けてきたロバート・ラウシェンバーグ(1925-)の近作展。 「良い芸術とは決して理解されるものではない」「もしも誰かが作品の意味を知ってしまったら、作品を観る側のリアリティや責任は消えてしまう」「理解するということは無分別になることの一つの形態だ」。1950年代に制作された作品 “Monogram” では、藁を詰め、ペイントし、タイヤで締め付けた羊が、印刷物、テニスボールなどからなるタブローに張り付けられていた。彼の作品では、テーマ、テクニック、素材に論理的な相互関係はなく、ちぐはぐなエレメントに満ちている。見慣れたものと未知のもののコンビネーション、抽象と具象、完璧なものと不完全なもの。一つの作品にそれらすべてが織り混ざり、観る側は自分自身のポジションを選択せざるを得ないか、あるいはそれさえも出来ない状態になる。しかしながら彼が生み出す新しく意外な組み合わせは、予測不可能な自然の理法に従っているのかもしれない。 マルセル・デュシャン、ジョン・ケージ、マース・カニンガムから影響を受け、1949年からクオリティの高い作品を精力的につくり続けてきたラウシェンバーグ。ここでは、1999年に発表されたフォトコラージュのシリーズ52点と、やはり90年代に制作された美しい立体作品に出会えるだろう。(蘭) |
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●<Grands maitres de l’art populaire du Mexique> インディオの伝統とスペイン文化の影響が織り混ざる、メキシコの工芸品300点。7/13迄(日月休) Bibliotheque Forney: 1 rue du Figuier 4e ●T’ang Haywen(1927-91) フランスで生涯を終えた中国人画家。初期はモネ、ゴーギャン、セザンヌから強く影響を受けるが、やがて東洋精神が流れる独自の抽象表現へと変化していく。油彩、水彩、映像作品など150点。9/10迄 ギメ美術館: 6 place d’Iena 16e(火休) ●<Sur la terre comme au ciel> 中世末期の西洋庭園はどんなものだったのか? 閉じられた庭園は処女性を象徴し、恋人たちの出合いの場であった。版画、絵画、タピスリーなど100点あまりの資料を集める。9/16迄(火休) クリュニー中世博物館:6 pl. P.Painleve 5e ●George MATHIEU(1921-) アメリカのアクションペインティングや日本の具体派と同時期に、「抒情的抽象主義」で戦後の抽象表現を根本から塗り替えた、フランス人アーティストの大回顧展。10/6迄(火休) Jeu de Paume: pl. de la Concorde 1er ●Martine FRANCK 写真家集団マグナムのメンバーで、カルティエ=ブレッソンのパートナーでもあるマルティーヌ・フランク。アイルランド、中国、ヨルダンの風景や、アーティストのポートレート写真など。9/29迄 Musee de la Vie romantique: 16 rue Chaptal 9e (月祝休) ●<Exile Raoul MAREK(1953-) 自らの選択で異国で暮らす人々は、何を得、何をもたらすのか? フォトモンタージュ、インスタレーション、ビデオ作品。10/13迄(月休) Musee Zadkine: 100 bis rue d’Assas 6e バカンスで遠出したなら ●<L’Atelier “Coucou Bazar”> Jean DUBUFFET(1901-85) Musee d’Unterlinden: 1 rue d’Unterlinden 68000 Colmar |
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