フランスでは1966年以来、28歳以上なら独身者でも養子縁組ができるようになった。が、誰でも養子縁組ができるかというと、現実は、とくに同性愛者にとって欺瞞と矛盾に満ちた差別的風潮が支配している。この現状をさらに膠着化させるかのように2月26日、欧州人権裁判所は裁判官4対3で、フランスが「同性愛者に養子縁組を拒否しても人権に抵触しない」との判定を下した。 パリに住む独身教師フルテ氏は91年(当時37)に養子縁組の申請をパリ県会に提出、民生委員には彼が同性愛者であることを隠さずに知らせた。2年後に当局は彼の「人格と教育者としての素養」を認めながらも彼の「生き方」と「母性の不在」を理由に申請を拒否した。が、パリ行政裁判所はフルテ氏の主張を認めた。96年、コンセイユ・デタはこの判決とは逆に民生委当局の拒否を認めた。司法と行政の二枚舌にふりまわされたフルテ氏は、2001年ついに欧州人権裁判所*に提訴した。 原告側は、同性愛者への養子縁組の拒否は人権憲章の中の「私生活と家庭の尊重」と「人権に差別なし」の2条項に違反すると主張。欧州人権裁判判決は「あくまでも子供の健康と権利を保護するためで同性愛者という区別は差別にはならない」とし、「独身同性愛者またはカップルによる養子縁組が子供にいかなる影響を及ぼすか各国の専門家の間でも意見が分かれており、世論もまちまち…子供を第一に考えると養子縁組に制限があるのは当然」と、同性愛者を子供の養育不適格者としてカテゴリー化したといえる。 リベラシオン紙によると、欧州では現在、オランダだけが同性カップルによる養子縁組を認めており、オランダとドイツ、英国は同性カップルにも親権を認めている。米国の多くの小児科医、精神科医が「同性カップルを親にもつ子供と異性の両親に育てられた子供とは健康、成長の面でまったく同じ」と調査の結果を発表しているものの、米国で同性愛者の養子縁組を認めているのは7州だけ。 ルモンド紙(02/2/26)があげている同性カップルの養子縁組体験者の中で、20年近い関係をもつ2人の女性教諭(40/41)の場合、一人は離婚した夫との間にできた息子(4)をもち、民生委員には住居の都合で女友だちと同居中と説明したが、同性愛者ということが感づかれ一蹴されたという。また南仏で13年看護夫(36)と同棲生活する医師(38)は民生委員に独身で一人暮らしと偽り、1999年に外国から男児(現6)を養子にもらったという。彼の友人は「同性者と暮らす独身者」として自分の生き方を偽らずに養子縁組を申請中だ。 異性・同性に関係なく新しいカップル、市民連体協約(PACS)者が増えていると同時に、人種・国籍・宗教に関係なく結婚・離婚・再婚・複合家庭と、核分子のように家族の結合、分裂がくり返される社会の中に、同性愛者が養子縁組により親となる空間はないというのだろうか、性差別以外のなにものでもないのだが。(君) *EU諸国他、東欧諸国を含む43カ国加盟。 |
養子縁組件数 |