香り高いスパイスを生かし豚肉を蒸し煮。 Filet de porc aux epices

 489号で紹介した一冊、 “Larousse de la cuisine facile” に出ていた料理で、大みそかのパーティーにトライしてみたら、うまくできました。最近、なぜか豚肉のレシピが多いのは、市場に、水ぶくれしていないおいしい豚肉を売る店ができたせいかなあ。4人分として、ロースト用にひもで結わえられているフィレ肉を1キロ、かたまりのままで買ってきます。
 まず豚肉を漬け込むタレを準備する。深皿などに、おろしショウガ(親指大のもの)、粉末コリアンダー小さじ1杯、シナモン小さじ1杯、粉末クミン小さじ半杯、それにハチミツ大さじ3杯を混ぜ合わせる。その上で豚肉をころがすようにしてまんべんなくタレでおおい、塩、コショウをすれば、肉の味噌漬けという感じになるだろう。スパイスはもちろん好み。丁字の頭を粉にして加えてもいいし、八角などのアニス風味もいい。クミンやコリアンダーがなかったらカレー粉で代用してもかまわない。冷蔵庫に少なくとも1時間は置いておく。
 タマネギ2個とニンニク2片をみじん切りにする。ココットのような厚鍋にオリーブ油をとり、中火にかける。油が熱くなったら豚肉を入れ、表面にこんがりと焼き色をつける。ここで火を弱め、タマネギとニンニクを加えて5分ほど炒めたら、トリガラのスープ(インスタントでもかまわない)を1カップ加える。フタをして、時々肉をひっくり返したり、煮汁を上からかけたりしながら、1時間ほど蒸し煮していく。  
 熱くしておいた大皿に、ひもと脂身をはずした肉を盛りつけテーブルへ。煮汁は煮詰まりすぎているようなら、少々水を加え、底にこびりついているうまみを溶けこませるようにすれば、香り高いソースになる。これをソース入れにとって肉の脇に添えましょう。付け合わせはバターライスがおいしい。ワインはコット・デュ・ローヌのコクのある白はどうだろう。(真) 

●ハチミツ miel 

 ハチミツは、古代から、神々の食べ物、豊穣・幸福のシンボルとして大切にされてきた。知らない土地に出かけ、その土地特有の花の蜜が凝縮されているようなハチミツに出会う楽しさ! ハチミツの色や風味、形状(サラリからドロリまでの液状、結晶化したもの)は花次第。クローバーtrefle(ほとんど透明)、アカシアacacia (薄い飴色)、ラベンダーlavande (飴色)、クリchataigne (濃い飴色)、モミsapin (こげ茶色)…。ジンジャー・ブレッド、カモの照り焼きやスペアリブ用のタレ、トリや子羊のタジンなどの料理に使われることも多い。腐らないものだから何種類か用意しておき、それぞれの料理に応じて使い分けたい。フロマージュ・ブランなどと一緒に食べるときにも風味を選べて楽しい。わが家ではあっさり味の〈アカシア〉と独特の風味を持った〈クリ〉を常備。

台所のフランス語
●dorer, braiser, arroser

 dorerは、料理用語では、こんがりきつね色に焼くこと。dorer le filet à la poêleとあったら、フライパンでヒレ肉(あるいは魚のおろし身)をきつね色になるまで焼くこと。オーブンに入れる前に、ツヤを出すためにパイなどの表面に卵の黄身を塗ることもdorer。

 braiserというのは、今回のレシピのごとく、密閉できる容器の中で、少量の液体を加え、弱火でゆっくりと蒸し煮する調理法。褐色に仕上げるために、最初に肉を充分に色づけてから煮ることは、braiser à brunという。

 arroserというのは液体をかけること。料理の本にはcuire le filet environ 1h en l’arrosant souvent avec le liquide de cuisson(煮汁をたびたびかけまわしながらヒレ肉を1時間煮る)のごとく出てくる。arrosageをきちんとやると、肉がパサパサしません。トリをローストする時も、溶け出た脂肪や焼き汁をarroserすることが大切。焼き色もきれいにつく。