「陽が当たらなくても冬は暖房があるからどうにかなる。でも、暑さはどうしようもない」という理由から、アリーヌさんは北向きの部屋を探し続けた。以前住んでいた11区のステュディオが南東向きで難儀したからだ。丸一日じゅう太陽の降り注ぐ部屋は、冬はいいが夏は地獄だったそうだ。日射しを遮るために屏風を使ったり、暑い日などは、本を持って20区の公園などへ行き、夜11時くらいまで外で涼んでいたという。こんなに寒い昨今ではあるが「夏はここに帰ってくると、ひんやりとしていて快適」と、息をつく。 灼熱地獄のステュディオは焦って買ったのが失敗の原因だった。住んでみたら、壁が取り壊した建物の漆喰屑などを利用して作った薄いもので、音が筒抜けだということにも気がついた。 数年後、引っ越しを決意、18区と20区を重点的に探す。めでたく20区で売買契約にサインしたら、所有者の気が変わり「売らない」と言いだした! アリーヌさんは住宅リサーチを再開。賠償金で3カ月間ホテル暮らし、もう3カ月間を田舎の実家で過ごすことになる・・・。 今住んでいるのは19区。特に希望する区ではなかったが、10階の高さからの眺めが気に入って、見学してから5日後には契約書にサインをした。とはいえ、17件さまざまな物件を見て回り、建物周辺の住人にも質問するなど慎重に調査した結果だ。アリーヌさんのカーヴは地下ではなくなぜか1階にある。湿気も少ないし暗証番号を押さないと入れないシステムになっているから安心だ。住んでみて1年半、買い物や交通は便利、環境よし、満足している。 越してきてから、道路工事があった。ビュット・ショーモン公園はその昔採石所だったこともあり、公園の周辺は場所により地盤沈下するのでセメントを注入するのだそうだ。難点は水。石灰が多い。 南仏の故郷をあとに、パリの大学へ来たのが1954年、パリ暮らしはもうじき50年になる。その間、化学を学び、各種化学研究室で働いたり、仕事をやめて田舎へ帰ったり。ふたりの子どは独立して、ひとり暮らしも15年。50歳過ぎてからパリに戻った時は、住み込みで高齢者の生活介護をしたこともあり、だから余計に「自分の住まい」に愛着がある。(美)
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ミントの鉢がバルコニーから中庭まで落下。それ以来、柵の下の隙間に板を当てた。
絵が趣味で、壁には自作がかかっている。なんと浴槽の壁にも。 |
バードウォッチング・カフェ
近所で見るべきものは? 「ビュット・ショーモン公園の孔雀の赤ちゃん」とアリーヌさん。同公園に地下鉄Botzaris駅前の入口から入ると子どもの遊戯場がある。その周辺に孔雀の夫婦がいて、今年半ばに子どもを産んだそうなのだ。寒い朝、なかなか現れない孔雀を待機するのに最適のカフェがあったので入ってみた。大きなガラス張りの壁は、双眼鏡で鳥を見るために作られたかのようだ。椅子やテーブルは事務所風で、赤煉瓦の建物とシャンデリアと不釣り合いなのが面白い(カフェ13フラン)。大広間は結婚式、ダンスパーティーなどのためにレンタルもする。250人収容できるそうだ。一晩でおよそ1万5000フラン。 |
暖かくなるとクジャクの家族を見ることもできる。 WEBER CAFE : 01.4200.0045 |