Filet mignon en croute
前々号では、柔らかい豚のフィレ・ミニョンを輪切りにしてからソテーし、ケイパー、黒オリーブ入りクリームソースを添える一品を紹介しましたが、おいしくできましたか。今回は、このフィレ・ミニョンをパイ皮で包んでロースト。見栄えがするし、友人などを招いてのパーテイー料理に最適!
600グラム前後のフィレ・ミニョンを一本買ってくる。塩、コショウし、表面に軽く色がつくように、フライパンで丸ごとさっと炒める。これをアルミホイルで包んで15分ほど冷ます。
温度が高すぎると、肉の芯まで火が通らないので、オーブンの目盛りを5(160度)に合わせ、点火しておく。
パイ皮は、pâte feuilletéeが歯ざわりが軽くていい。長方形の冷凍ものを解凍し3ミリほどの厚さに伸ばして使うと巻きやすいけれど、すでに丸く伸ばしてあるものでも構いません。少しくらい形がいびつになっても、とにかくフィレ肉を包み込んでしまえばいいのです。皮全体をフォークでつつき、アンチョビーペーストを
一面に塗る。タイムのような好みのハーブをまき散らしてもいい。
フィレ・ミニョンは先細りで形が悪いという人は、先の細い方を5センチほど切り、折り重ねるようにしてもいい(図参照)。両端もかぶるように、パイ皮でくるりと巻きこみ、バターを塗ったオーブン用の器にのせる。表面に鋭利なナイフで格子模様をつけ、焼き上がりにツヤが出るように、少々の水で溶いた卵の黄身を刷毛でまんべんなく塗ります。
これを熱くなっているオーブンに入れて約45分ロースト。早々と表面が焦げてしまう感じなら、温度を下げてください。
キュウリやトマトの輪切り、サラダ菜などでまわりを飾ってそのままテーブルに出し、薄く切り分けながらサービスするといい。プロ顔負けの美しさに、我ながら思わずニッコリ。モー産の粒々入りマスタードなどを添えましょう。(真)
マスタードソース2種
●魚料理用
小鍋にマスタード大さじ2、3杯、あったらフュメ(魚のダシ)をその倍量加えて弱火にかけ、よく混ざったら、小さく切り分けておいた冷たいバターを大さじ3杯ほど混ぜ入れ、少々煮詰めます。おろしショウガ少々を加えるのも面白い。きざみパセリを散らせばできあがり。バターのかわりに生クリームを使えば軽く仕上がります。
●肉料理用
肉を焼いたフライパンに、白ワイン(トリ肉や子牛肉)や赤ワイン(子羊肉や牛肉)を半カップほど注いで、肉のうまみを溶けこませたら、マスタード適量を加える。ぐつぐつといってきたら、生クリームを加えて少々煮詰め、塩、コショウで味を調える。グリーンペッパーなどを加えてもいい。
●ハーブ・スパイス探検|マスタードmoutarde
フランスのスパイスで一番利用度の高いものといったら、なんといってもマスタード。フランスのマスタードの原料は黒がらしmoutarde noireと茶がらしmoutarde bruneで、主にスペインで生産されたものが輸入されている。
どこのスーパーでも買えるマスタードといえば、ディジョン産moutarde de Dijonとモー産moutarde de Meaux。前者は、細かく挽いて粉にしたからしの実を白ワインやコショウで調製。なめらかな感触を持ち、涙が出そうな極辛のものもある。後者は粗挽きした実をビネガーと混ぜ合わせたもので、ふつう陶製の壺に入って売られている。粒々が見え、辛みは優しく風味がよい。またソースなどに入れるとその粒々がきれい。昔風à l’ancienneなどと表記されていることが多いが、ディジョン産の方が古く、1382年の文献にその名が出ているそうだ。
英国風は、白がらしの実を粉にしてターメリックで真黄色に着色したもの。粉末もあり、水に溶いて使うと和がらしに近い風味になる。
フランスの定食屋のテーブルには、塩、コショウと並んで必ずマスタードが置いてあり、フライドポテト付きステーキやシュークルートなどに欠かせない。料理を待ち切れない人が、マスタードをバゲットパンにつけながら食べている風景にもよく出会う。
ビネグレットソースに加えたり、フロマージュ・ブランに混ぜ入れたりすればサラダのお供。ショウガ、アニス、パプリカ、唐辛子、グリーンペッパーなどと組み合わせて、お得意のマスタードソースを編み出しましょう。