フランスの第4都市トゥールーズの南郊外にある石油会社トータルフィナ系列のAZF社化学肥料工場の大爆発は、米国での同時多発テロ後わずか10日後の9月21日朝10時15分。3日後検察庁は「99%事故」と速断した。が、爆発の規模と熾烈さからして疑問は深まるばかり。 化学肥料原料である硝酸アンモニウム300トンの貯蔵庫が一瞬のうちに爆発し、工場をのみ込んだかのような幅50m、深さ10mの大穴、爆風が付近の団地・民家の屋根や窓を破壊し、空中に赤みがかった有毒煙、廃虚、路上に血だらけの死傷者数百人…まるで直撃された戦場そのもの。死者29人(工員10人)、負傷者約2440人(重傷34人)、破損家屋・公団住宅約2万5千戸。付近の多くの校舎が崩壊し、生徒約1万人は当分他校に分散。 AZF社工場は1924年に創業、当時周辺は田園地帯だった。同工場に隣接するのは、14世紀以来存在する国営火薬製造公社SNPEと国営化学工場Tolochimie。労働者・家族は30年代から周辺に家を建て、50年代以降HLM公団も付近に棟を列ねていった。工場地帯を抱き込むかたちで都市圏拡大が進められた。これら化学工場の雇用人口と数千万フランの企業・不動産税は市にとって不可欠な収入源だ。組合も工場閉鎖または新たな過疎地帯への移転は非現実的とみる。 82年に欧州連合は汚染・危険度の高い工場に対しセベソ(76年イタリアのセベソ市の農薬工場爆発に由来)という基準を設けた。今年4月現在、セベソ2に指定された工場は全国に1249カ所。そのほとんどが都市圏に林立し、リヨンなどではローヌ川沿いに化学工場が密集している。 AZF工場爆発の原因は何だったのか。工員や住民約250人の証言と化学者たちの分析により事故説が揺らぐ。住民の何人かは最初に鈍い炸裂音を聞き、その2、3秒前に工場の屋根に向かう閃光を目撃し、2度爆発音を聞いたという。また化学者によると、硝酸アンモニウムの自然発火はありえない。重油など有機化合物が混入した時に発生する炭酸ガスが容器内で圧縮されその圧力で爆発することはあるが、起爆物がないかぎり不可能。それも200度以上の熱が加わわらないかぎり爆発しないと断言する。 10月初め数種の日刊紙は、死亡者29人の他にもう1人、チュニジア人(35)の死体が爆発現場から発見され、イスラム過激派テロリスト”カミカゼ ” と同様、下着を数枚重ね着していた、爆発の5日前に2人のアラブ系の同僚とともに発送部に臨時に雇われ、貯蔵庫の爆発時には隣室にいたなどと報道し、前述の住民らの証言とないまぜに内部者によるテロ説が浮上。 が、10月4日、予審判事に提出された 調査官による報告書は、硝酸アンモニウムと隣り合わせて貯蔵してあった硫酸が貯蔵庫の地面下に漏れ、300トンの硝酸アンモニウムを爆発させた可能性が高いとしてテロ説を退ける。 米国のあとはフランス ? 化学工場のあとは細菌試験所 ? 原発 ? 市民の不安ははてしなく膨張するところだったが、どうやら工場内の安全問題に落ちつきそう。(君) |
AZF工場爆発の原因は何だと思うか。 55% 事故 |