観察するもの、観察されるもの。 “Dan Graham”回顧展(1965-2000)

 もしダン・グラハム(1942-)の作品に共通項を見い出そうとするならば、それは「観察」の観念だろう。自分自身や他者、物体を対象とし、客観的で無感情な観察。でも心理の深層をくすぐり、ユーモラスでもある。
 彼がNYへ渡った1960年代初めはミニマル・アート、ポップ・アート、コンセプチュアル・アートなどが全盛の時代だ。そこでグラハムは刺激的なアートの世界を見い出し、Sol Lewitt、Donald Judd、Robert Smithson、Richard Serra、Roy Lichtenstein、Andy Warhol、Bruce Nauman、また音楽家のSteve Reich、La Monte Youngなど、様々なアーティストと知り合った。初期の作品はコンセプチュアルな観察記録/詩である。数字の表は自分と物体の間の距離を記し連ねたもの。また、射精直後のペニスと自分の状態を客観的に記録した作品もある。
 1969年のBruce Naumanとの出会いがきっかけとなり、ムービーカメラを使い始める。Body Press(1970-72)は、2人の人物が相互に撮影し合った2本のフィルムからなるインスタレーションだ。観客は、観察される2人によって観察されたフィルムを観察する。Video Projection Outside Home(1978)は、家の前の大きなスクリーンに、その家の住人が見ているテレビの映像が映し出され、住人がテレビを消すとスクリーンの映像も消えるというもの。Two Viewing Room(1975)では、壁が鏡でできた部屋の観客を、隣の部屋の観客が、部屋を二分する半透過の鏡越しとビデオカメラとで、二重に観察する。この半透過の鏡(一方が鏡、もう一方がガラスのように透けて見える)は70年代以降グラハムが頻繁に使う素材である。これを通常の鏡、ビデオ映像などと併せ、様々な投影イメージを複雑に絡ませている。美術館の所々に設置されている大小の部屋は、彼の近作だ。年々建築的要素が強くなるが、素材はやはりガラス、鏡。そして観察するものと観察されるもの。
 ビデオ作品は個別にゆっくり見られるようになっているので、たっぷり時間をとって訪れたい。(ヤン/訳:仙) 

パリ市近代美術館: 11 av.du Pr市ident Wilson 16e (月休)10/14日迄 
Video Projection Outside Home(1978)

ハンガリーの写真
ロマン主義からアバンギャルドへ(1880-1930)

 ハンガリーの写真家で馴染み深いのは第一次大戦後に国外へ移住したBrassa普AKert市zなどだが、大戦後も国にとどまり、国内で活躍した写真家たちの作品約100点を展示するエキスポだ。
 1867年、オーストリア=ハンガリー二重帝国となったハンガリーでは、技術・経済の西欧化が推し進められ、首都ブダペストは国際都市として20世紀初頭、繁栄の頂点に達した。若い写真家たちは精力的にヨーロッパ各都市へ留学し、中でもミュンヘン写真学校に学んだJ陽sef P残siは、ヨーロッパ中の注目を集めた。
 この時期は「1900年世代」と呼ばれる彼らにとって、ハンガリー人としてのアイデンティティーを探求する時代でもあった。バルトークが各地を巡って民俗音楽を採譜したように、同時代のアーティストは「自分らしさ」を探求。「ハンガリースタイル」として行き着いたのは、自然の風景を霞んだトーンでプリントする絵画のような写真。が、その傾向はみるみる抽象的な写真へと変化していく。
 ハンガリー写真史上最も変化に富んだ作品と、今まで知ることのなかった優れた写真家たちを再発見したい。(仙)

Jacques Faix

*Photographies hongroises(1880-1930)
Des Romantismes aux Avant-gardes
Musee de la Vie romantique:

16 rue Chaptal 9e(月休)10/28日迄


●<Next generation/Art contemporain d’Asie>
日本、韓国、中国、台湾から、アジアの新世代アーティスト51人の作品。ミクロコスモスとして心象風景を描くヨシカワなど日本からは6人の作家が出品。9/9迄
Passage de Retz: 9 rue Charlot 3e(月休)
●Anita CONTI(1899-1997)
<La Dame de la mer>
海と、海に生きる人々を愛した女性写真家の作品。9/9迄
Pavillon des Arts: Les Halles, Porte Rambuteau 1er(月休)
●Eduardo CHILLIDA(1924-)
スペイン人彫刻家Chillidaは、人間、自然、空間の関係を鉄という素材で問い続ける。9/16迄(月休)
Jeu de Paume: 1 pl. de la Concorde 1er
●<250 ans de pub>
18世紀から現代まで、広告美術館所蔵コレクション。10/14迄(月休)
Musee de la Publicite 107 rue de Rivoli

●<La Guerre Civile espagnole>
1936年7月共和政権に対する軍の蜂起がきっかけで始まったスペイン市民戦争は、32カ月後フランコ軍事独裁政権確立によって終結した。50万人もの犠牲者を出したこの戦争中に撮影された報道、プロパガンダ写真など162点。9/23迄(月休)

H冲el de Sully: 62 rue St-Antoine 4e

<バカンスで遠出したなら…>

●Biennale d’Art contemporain de Lyon

6回目を迎えたリヨンのビエンナーレ。今回のテーマは「Connivence / 暗黙の了解」。ビデオゲームと現代アートの繋がりを考えさせるA.Bulloch、Murakami、Kolkozらの作品のほか、ダンス、写真、音楽、フィルムなど様々な分野の作品を展示。9/23迄
Musee d’Art Contemporain de Lyon/

L’Orangerie du Parc/ Les Subsistances 

詳細はwww.biennale-de-lyon.org

●<Le Bambou en Chine>

中国で4000年前から建築物、家具、日用雑貨、農耕用具、楽器、武器、薬品などに使われてきた竹。100点余りのオブジェが中国竹文化の豊かさを語る。(火休)
Musee des Arts asiatiques:

405 Promenade des Anglais, 06200 Nice

●Paul McCARTHY

鼻にチョコレートを流し込まれるピノキオ、全身ケチャップまみれのアメリカンコミックのスターたち。嘘くさい夢と希望の化身を、性や暴力のイメージでとことんまで現実に引き戻す。先入観で固定された価値観を混乱させ、観客を不安の極致に引きずり込むマッカーシーの作品。フランス初の回顧展。必見。9/23迄
Villa Arson : 20 av Stephen-Liegeard,

06200 Nice(火休)

●Wassily KANDINSKY

感情を色と形に置き換えた視覚的交響曲。カンディンスキーの回顧展。10/10迄

Fondation Maegh 06570 Saint-Paul