もしダン・グラハム(1942-)の作品に共通項を見い出そうとするならば、それは「観察」の観念だろう。自分自身や他者、物体を対象とし、客観的で無感情な観察。でも心理の深層をくすぐり、ユーモラスでもある。 彼がNYへ渡った1960年代初めはミニマル・アート、ポップ・アート、コンセプチュアル・アートなどが全盛の時代だ。そこでグラハムは刺激的なアートの世界を見い出し、Sol Lewitt、Donald Judd、Robert Smithson、Richard Serra、Roy Lichtenstein、Andy Warhol、Bruce Nauman、また音楽家のSteve Reich、La Monte Youngなど、様々なアーティストと知り合った。初期の作品はコンセプチュアルな観察記録/詩である。数字の表は自分と物体の間の距離を記し連ねたもの。また、射精直後のペニスと自分の状態を客観的に記録した作品もある。 1969年のBruce Naumanとの出会いがきっかけとなり、ムービーカメラを使い始める。Body Press(1970-72)は、2人の人物が相互に撮影し合った2本のフィルムからなるインスタレーションだ。観客は、観察される2人によって観察されたフィルムを観察する。Video Projection Outside Home(1978)は、家の前の大きなスクリーンに、その家の住人が見ているテレビの映像が映し出され、住人がテレビを消すとスクリーンの映像も消えるというもの。Two Viewing Room(1975)では、壁が鏡でできた部屋の観客を、隣の部屋の観客が、部屋を二分する半透過の鏡越しとビデオカメラとで、二重に観察する。この半透過の鏡(一方が鏡、もう一方がガラスのように透けて見える)は70年代以降グラハムが頻繁に使う素材である。これを通常の鏡、ビデオ映像などと併せ、様々な投影イメージを複雑に絡ませている。美術館の所々に設置されている大小の部屋は、彼の近作だ。年々建築的要素が強くなるが、素材はやはりガラス、鏡。そして観察するものと観察されるもの。 ビデオ作品は個別にゆっくり見られるようになっているので、たっぷり時間をとって訪れたい。(ヤン/訳:仙) |
パリ市近代美術館: 11 av.du Pr市ident Wilson 16e (月休)10/14日迄 Video Projection Outside Home(1978) |
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ハンガリーの写真 ロマン主義からアバンギャルドへ(1880-1930) ハンガリーの写真家で馴染み深いのは第一次大戦後に国外へ移住したBrassa普AKert市zなどだが、大戦後も国にとどまり、国内で活躍した写真家たちの作品約100点を展示するエキスポだ。 1867年、オーストリア=ハンガリー二重帝国となったハンガリーでは、技術・経済の西欧化が推し進められ、首都ブダペストは国際都市として20世紀初頭、繁栄の頂点に達した。若い写真家たちは精力的にヨーロッパ各都市へ留学し、中でもミュンヘン写真学校に学んだJ陽sef P残siは、ヨーロッパ中の注目を集めた。 この時期は「1900年世代」と呼ばれる彼らにとって、ハンガリー人としてのアイデンティティーを探求する時代でもあった。バルトークが各地を巡って民俗音楽を採譜したように、同時代のアーティストは「自分らしさ」を探求。「ハンガリースタイル」として行き着いたのは、自然の風景を霞んだトーンでプリントする絵画のような写真。が、その傾向はみるみる抽象的な写真へと変化していく。 ハンガリー写真史上最も変化に富んだ作品と、今まで知ることのなかった優れた写真家たちを再発見したい。(仙) |
Jacques Faix *Photographies hongroises(1880-1930) 16 rue Chaptal 9e(月休)10/28日迄 |
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●<Next generation/Art contemporain d’Asie> 日本、韓国、中国、台湾から、アジアの新世代アーティスト51人の作品。ミクロコスモスとして心象風景を描くヨシカワなど日本からは6人の作家が出品。9/9迄 Passage de Retz: 9 rue Charlot 3e(月休) ●Anita CONTI(1899-1997) <La Dame de la mer> 海と、海に生きる人々を愛した女性写真家の作品。9/9迄 Pavillon des Arts: Les Halles, Porte Rambuteau 1er(月休) ●Eduardo CHILLIDA(1924-) スペイン人彫刻家Chillidaは、人間、自然、空間の関係を鉄という素材で問い続ける。9/16迄(月休) Jeu de Paume: 1 pl. de la Concorde 1er ●<250 ans de pub> 18世紀から現代まで、広告美術館所蔵コレクション。10/14迄(月休) Musee de la Publicite 107 rue de Rivoli ●<La Guerre Civile espagnole> H冲el de Sully: 62 rue St-Antoine 4e <バカンスで遠出したなら…> ●Biennale d’Art contemporain de Lyon 6回目を迎えたリヨンのビエンナーレ。今回のテーマは「Connivence / 暗黙の了解」。ビデオゲームと現代アートの繋がりを考えさせるA.Bulloch、Murakami、Kolkozらの作品のほか、ダンス、写真、音楽、フィルムなど様々な分野の作品を展示。9/23迄 L’Orangerie du Parc/ Les Subsistances ●<Le Bambou en Chine> 中国で4000年前から建築物、家具、日用雑貨、農耕用具、楽器、武器、薬品などに使われてきた竹。100点余りのオブジェが中国竹文化の豊かさを語る。(火休) 405 Promenade des Anglais, 06200 Nice ●Paul McCARTHY 鼻にチョコレートを流し込まれるピノキオ、全身ケチャップまみれのアメリカンコミックのスターたち。嘘くさい夢と希望の化身を、性や暴力のイメージでとことんまで現実に引き戻す。先入観で固定された価値観を混乱させ、観客を不安の極致に引きずり込むマッカーシーの作品。フランス初の回顧展。必見。9/23迄 06200 Nice(火休) ●Wassily KANDINSKY 感情を色と形に置き換えた視覚的交響曲。カンディンスキーの回顧展。10/10迄 Fondation Maegh 06570 Saint-Paul |
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