夏のなが~いバカンスは、みんなで映画を観に行こう。

真夏の悪夢、サスペンス溢れる2作。
Souvenirs Mortels ほか

 まずスペイン人アルヴァロ=フェルナンデス・アルメロが監督した『Souvenirs Mortels』では、悪ふざけの挙句友人を殺してしまった男女グループに襲い掛かる数々の不幸が描かれる。忘れたい、と思っている忌わしい事件が、警察の捜査再開をきっかけに再び皆の記憶に蘇る。そして死んだ友人の亡霊に取りつかれたかのごとく、一人、二人…と次々に死が訪れる。
 若い時は特に「死」に惹かれる時期がある。文学なり美術なり、また映画なりで美化された死に憧れた経験がある人は多いに違いない。ただ美しいと思っていた「死」も、いざ自分の身にふりかかると恐怖でしかないのだ。原題『Arte de Morir 死ぬ芸術』は、「死」に魅了されたそんな若者たちを象徴している。サスペンスの盛り上げ方はうまいが、最後のどんでん返しに意外性がないのが残念。
 変わって、スウェーデン出身ヨハンヌ・リュンボルグ監督の『Sleepwaker』では、一人の夢遊病患者が犯しただろう殺人事件と、それに関わる人々が描かれる。この話のオリジナリティーは、夢遊病患者が自身の睡眠中の行動をビデオで記録するところにある。夢遊病患者につけられたカメラが、主人公の奇妙な行動を明らかにしていく…人間の身体と精神を休めるはずの眠りが悪夢に変わっていく。安眠の裏にはこんな恐ろしいことがあるのだ…。これがアメリカ映画ならば、特殊効果を駆使して恐怖の度合いを盛り上げるのだろうが、スウェーデン産の本作品は、飾り気なく真っ向から勝負している。それがなかなか怖いのだ。最後にまたまた大逆転があるけれど、それは秘密…。(海)

Sleepwaker


ラ・ヴィレット野外映画祭
8月26日まで月曜をのぞく毎日、22時より野外の巨大スクリーンで古今東西の名作が楽しめる。入場無料。12年目を迎えた本映画祭の今年のテーマは「Familles, clans et tribus 家族・派閥・種族」。
《8月のお薦めプログラム》
3日:『オール・アバウト・マイマザー
Tout sur ma mere』

ペドロ・アルモドバル監督

5日:『グロリア Gloria』

ジョン・カサベテス監督

8日:『レイニング・ストーンズ Raining

stones』 ケン・ローチ監督

9日:『地獄に堕ちた勇者ども

Les Damn市』 ヴィスコンティ監督
10日: 『ハンナとその姉妹 Hannah et ses soeurs』 ウディ・アレン監督

15日:『御法度 Tabou』 大島渚監督

17日:『フリークス Freaks』

トッド・ブロウニング監督
18日:『フューネラル Nos Funerailles』

アベル・フェラーラ監督

19日:『攻殻機動隊 Ghost in the shell』

(アニメ)押井守監督
25日:『七人の侍 Les Sept samourais』

黒澤明監督

26日:『スナッパー The Snapper』

スティーブン・フリアーズ監督

*Parc de la Villette:211 av. Jean-Jaures 19e M。 Porte de Pantin 01.4003.7692
www.la-villette.com.

 

●もうひとつの野外上映会
 ヴィデオテックForum des Imagesの主催で、パリで撮影されたフランス&イタリア映画20本が野外で無料上映される(8/10~28)。ゴダールの『勝手にしやがれ』、トリュフォーの『大人は判ってくれない』、デュヴィヴィエの『パリの空の下』、フェリーニの『道化師』やクラピッシュの『猫が行方不明』など、それぞれの撮影場所からほど遠くない広場や公園などで上映されるから、鑑賞前または鑑賞後にヒーロー&ヒロインになった気分で散策ができる。
問い合わせは08.2000.7575まで。

ほかにもオススメ3作。

 ●Spy kids
 『エル・マリアッチ』の超低予算製作伝説、タランティーノとの共犯関係を経て、
最近はハリウッドの便利屋の感もあるロバート・ロドリゲス最新作。誘拐された元スパイの両親を助けに、二人のスパイキッズが立ち上がるのだが…。
 映画の冒頭、母親は自分の過去をお伽話風に物語るが、これは本作が一応現代版お伽話である証明。そしてお伽話のルールにのっとり、やはりベタな教訓「家族は大切」が堂々現れ、そこに監督の開き直りさえ漂う。悪い映画じゃない。小技が効いている。夏休みに子守りを頼まれた時にいっしょに観るといい。でも観た後、大人のあなたに残るものは…ゼロ! 夏は暑いし考えるのもかったるいから、それもいい。『Eyes wide shut』などで注目のおちょぼ口にネズミ顔、アラン・カミングの怪演だけは心に残る。(瑞)

●Shrek
 アニメとしては異例、カンヌ映画祭コンペ部門出品作。マイク・マイヤーズ、キャメロン・ディアスなどのビッグネームが声を担当しているのも話題。
 緑色の妖怪シュレクは、お調子者のロバと一緒に巨大なドラゴンが支配する塔に幽閉されたお姫様を救う冒険に出る。
 一応こちらもお伽話的ルールにのっとり、ちゃっかりと「人を見かけで判断するな」というモラルが見え隠れ。だがその一方で、お姫様も逞しく敵をなぎ倒し(おまけにゲップまでする)、巨大ドラゴンがとある理由で急にしおらしくなる様などは、典型を周到に避けていて賢い。白雪姫、ピノキオなどお馴染みの主人公らも大集合、コンピューターで魅力的に描かれていて、子供以上に大人の中に宿るかつての子供が喜ぶかも。というわけで、『Spy kids』との無理矢理お伽話対決は『Shrek』の勝利で一件落着。(瑞)

●La Chambre du fils
 ナンニ・モレッティ監督のパルム・ドール受賞作をようやく観に行った。やっぱりよかった。少年の事故死のあとに取り残された、父、母、姉。それぞれが、この突然の喪失から立ち直っていく姿が、克明でいながら慎ましさを失わずに描かれていく。ロッセリーニは『ヨーロッパ1951年』という傑作で、息子を失って生きる焦点をなくした夫婦を描いているが、母親役のローラ・モランテは、半世紀前のバーグマンのように美しい。自分の悲しみをできるだけ表面に出さないようにしながら、親の苦しみに付き添っていく姉(J・トリンカが自然な演技!)の姿に涙がとまらない。地中海の朝の光へと向かうラストの旅のシーンで、まれな映画体験を得ることができる。(真)