「映画に対する思いが高いレベルにある」

 「死は永遠の孤独…」。じわじわと染みわたる恐怖が国境の壁を溶かし、カンヌでは国際批評家連盟賞を獲得、現在パリで劇場公開中の映画『回路』。俳優の加藤晴彦さんは、ネットサーフィン中、”死のアクセス” に巻き込まれる大学生、川島亮介役で主演、今年5月カンヌ映画祭に初参加。スプライトのCM撮影地シャモニーに続き、渡仏はこれで2度目だとか。
 カンヌでは時間にルーズなフランス人に驚かされたが、「何かしていても次のことを考えてしまう日本人の方が忙しすぎるのかも」。一方、上映中誰かが物音をさせたら “シッ!” と目を光らせ、作品批評にも手厳しい観客に、「映画に対する思いが高いレベルにある」と感心。『回路』上映後にフランス人のおばあちゃんが寄ってきて、「良かったよ」と声をかけてくれたのも、日本ではあり得ない嬉しい経験。 「ハリウッド=大作」という図式的な見方ではなく、それぞれの作品が中身できちんと理解されていることも実感。「短い滞在だったけどいい刺激をたくさんもらいました」
 『回路』の舞台挨拶の時、黒沢清監督は、「”ある視点” 部門でホラー映画がセレクションされるのは珍しい。カンヌのふところの広さに感謝」と語っていたが、それは『回路』が単なる怖がらせホラーを超えていることの証明だ。さて加藤さんにそんな本作の魅力を訊ねてみると…
 「日常なんて嫌なことの方が多いのかもしれないけど、それも生きてるからこそ感じられること。僕はこの映画を初めて観た時、 “生きていることは有り難い” ってホッとした。だから怖いと席を立つのではなく、映画の最後に見えてくるものまで逃さず見て欲しい」
 取材中、事務所の人が加藤さんのカップにお茶を注ごうとしたら、「自分でやるよ」とサラリ。スプライトのように爽やか青年は、話す言葉も態度にも、しっかり者の素顔が滲み出ていた。(瑞)