ニエル・トロニ展 Niele Toroni (1937-)

 BMPTというグループが結成されたのは1966年のことである。D.ビュラン、O.モセ、M.パルマンティエ、N.トロニの
4人のメンバーで、後にシュポール・シュルファスの幕開けへと繋がる歴史的な運動と考えられている。BMPTのコンセプトは、従来の伝統的な美術へのアンチテーゼとして、極度に簡潔な「0度の絵画」、つまり絵の中の感情や作品のイマジネーションを徹底的に否定した純粋な絵画を構築することであり、従来の美術史を否定し、絵画とは上記4人をもって始まると宣言されていた。グループとしての活動は一年しか続かなかったが、60年代という時代といい、その反逆精神が、またその後フランスのアカデミーの中心に位置することになる成り行きなどが、映画界でのゴダールを思わせる。
 トロニの場合、「トラヴァイユ/パンチュール(仕事/絵画)」と題された作品の制作メソッドは、1966年に設定されてから全く変わっていない。参考までにそのメソッドを引用すると、30cm間隔で50番(50mm)の平筆を使って筆跡を残してゆく、素材は布、木綿、紙、床、壁で色は白を基本とする、といった具合だ。
 1967年1月、トロニの初の「仕事/絵画」はパリ市立近代美術館のサロン・ド・ラ・ジュヌ・パンチュールで他3人のメンバーと共に公開されている。その作品は今回の回顧展においても、今年制作された作品の横に並んでいる。
 色や絵の具のフレッシュさを除けば何ら変化のない一連の仕事は、まずは歴史的価値としての作品なだけに、経緯なしには面白みのない展覧会となってしまう。
作家の人生を作品の変化と共に追ってゆく楽しみのある回顧展という概念を全く無意味なものとしているこの展示に対して、トロニのメッセージは絵画の第一段階である「一筆を置く」作業に終始する。ビュランが当時唱えたことを様々な機会で展開させ、最近パリの某画廊で開かれた展覧会においても未だにストライプの可能性を追求しつづけているのに対して、トロニはそのコンセプトの中に、自ら縛られ埋もれてしまった感がある。それもまた作品の発展を望む側の勝手な期待だろうか。今年ヴェネチア・ビエンナーレに招待されている彼のこの個展は6カ月も続く。(礼)


*Musee d’art moderne de la ville de Paris: 11 av.de Pr市ident Wilson 16e

9月16日まで(月休)


話題のビデオ作品展
  「日常」をテーマに制作する30代の女性ビデオアーティスト3人を紹介したい。現代アートの重要な位置を占めるようになったビデオという媒体。他者をリアルタイムで追う作品には、いつも共通の疑問が持ち上がる。「どこまでがアートで、どこからが日常か」
 まず、パリ市立近代美術館で開催されているイギリス人Gillian Wearingとスウェーデン人Ann-Sofi Siden。Wearingのアルコール依存症の人々を捉えた作品は、その制作方法からいわゆるアート作品としての存在を主張する。それゆえに、観客は様々な思いに捉われることになる。なぜ彼らはそこにいるのか?私たちを楽しませるため?悲惨な境遇を見せるため?嫌なこの世の中を疎むため?

 Sid始は、ドイツとの国境に近いチェコの娼婦の日常を映した。娼婦、客、警察官らへのインタビューが、個々の内面や彼らを取り巻く社会を浮き彫りにする。そしてガラスの小部屋でそれらを見る観客は、まるで打ち明け話をされているような錯覚を起こすのだ。

 インドネシア出身オランダ在住のFiona Tanは、上記のふたりとは全く別の観点で日常空間を映し出した。ある日の午後、建物にいくつかの窓が見える。ふと、ひとつの窓の奥に女が現れ、窓を拭き始める。いつまでも、窓を拭き続ける…。控えめな観察眼で捉えた繊細な映像は、美しい静物画のようだ。(ヤン/訳:仙)


*Wearing, Siden /パリ市立近代美術館

5/6日迄(月休) *Fiona Tan/Galerie Michel Rein: 42 rue de Turenne 3e 5/12日迄


●フランス画家・版画家協会会員展
故長谷川潔に次ぐ2人目の日本人正会員、木原康行(版画2点、デッサン1点)を含む37人と物故会員4人の作品展。5/3~18迄
6区区役所 : Place St-Sulpice 6e(日休)
●Robert INDIANA (1928 -)〈 回顧展〉
ポップアートの先駆者インディアナは標識やロゴを駆使した作品で有名。5/23迄
Galerie Denise Rene :196 bd St-Germain 7e

●Milton KATSELAS〈絵画・彫刻〉

米国の名優・役者を演技指導してきた演出家カッツェラスの絵画・彫刻30点。5/26迄

Galerie Yoshii : 8 av Matignon 8e
●〈Denise Rene : 1944~77〉

抽象芸術の擁護者ドニーズ・ルネ。57年彼女の画廊でモンドリアン、マレヴィッチ(構成主義)、アルバース(オプ・アート)を紹介。ヴァザレリ(幾何学的抽象)、アルプ、カルダー、ル・パルク(視覚芸術探究グループ)、ソト(キネティック・アート)など、ドニーズ・ルネ画廊を経た70年代までの抽象芸術の流れを追う。6/4迄(火休)

ポンピドゥ・センター(Niveau 4)

●19~20世紀仏巨匠画展

ドラクロワからブラックまで巨匠35人(バルチュスの風景画1点)の約60点。7/11迄
Galerie Schmit : 396 rue St-Honore 8e

●Bernard BOUTET DE MONDEL 回顧展

父親Louis Maurice(1851-1912)は絵本画家として有名。Bernard(1881-1949)はパリ上流社会のダンディな肖像画家として知られ、大戦間はモロッコ、NYの著名人の肖像画や風景画を多く制作。6/30迄

Mona Bismarck Foundation : 34 av de New York 16e (日月休)

●Antoni TAPIES (1923 – )

常にマチエールとの問いかけを続けるタピエスの版画49点と本15点。7/29迄(月休)

ミッテラン国立図書館(M : Quai de la Gare)

《イタリアの季節テーマ展》

●ボローニアのデッサン《1480~1580》

当時の文教都市ボローニアでのルネサンス、マニエリスム、アカデミズムまで百年の流れを追う約60点。7/2迄(火休)

ルーブル美術館 (Sully 翼 1階)

●イタリア風景画展《1780~1830》

イタリア滞在で初めて野外で光に映える風景を描いた英・仏・ベルギー他の官選画家80人の約200点。7/9迄 グランパレ

●変動期のイタリア《1880~1910》

19世紀末イタリア作家たちはレアリスムから分割主義社会派へ、モダニズム、未来派(キリコ)へと発展していった。約80点。

7/15迄 オルセー美術館 (月休)

● Carlo BUGATTI (1853 – 1940)

現代デザインの父といわれるブガッティの耽美主義とオリエンタリスムを加味した家具やインテリア、宝飾品他。(同上)

● DESNOS / FOUJITA / YOUKI
モンパルナス時代にフジタはモデルのユキに恋するが、彼女は詩人デスノスへと移っていった30年代の三角関係をテーマに絵画・デッサン・写真・資料他。7/29迄Musee du Montparnasse: 21 av du Montparnasse 14e (月火休)