主人公ハリーの限度を知らない “親切” に思わずぞくっとしてしまう。「凍りつくようなコメディと悪夢的なスリラーの美味なる混合」(テレラマ誌) などと絶賛された『ハリー、見知らぬ友人』は、フランス映画界に久しぶりの新風をもたらした。監督のドミニク・モルさん (38) はドイツ生まれ。森や湖に囲まれた町バーデンバーデンで育ち、16歳まで映画知らずの生活だったが、フェリーニの『サテリコン』やヒッチコックの『鳥』で映画に開眼。高校を出て1981年にパリにやってくる。翌年NYに旅立ち、1983年に最初の短編を撮影。1984年にパリに舞い戻りIDHECに入学、本格的に映画を学ぶ。92年に最初の長編『Intimite』を撮るが興行的には失敗。それから8年たって封切られた『ハリー…』は2作目という、のんびりペースの映画作りだ。
「カメラを回さなくても楽しく生きていける。古生物学者になることもできたのです。同じように興味を持つことができたでしょう」。この映画との距離感が自由さになり、鋭い映画感覚のベースになっているような気がする。(真) *5月中旬に日比谷シャンテ・シネで公開予定 |
“Je peux très bien vivre sans tourner. J’aurais pu être paléontologue. |