Tarte aux citrons
折り込みパイ生地pâte feuilletéeはすごく手間がかかるし、小麦粉、バターそれぞれ少なくとも500グラムを使わないとうまくできない。というわけで、フランスの家庭でも自家製折り込みパイ生地でタルトを作る人はまれ。僕らも劣等感を持つことなしに、すでに丸く伸ばしてある折り込みパイ生地(230~250グラムくらい)を買ってくる。できたら、”pur beurre” (バターのみ使用)と明記してあるものを使いたい。味にグンと違いが出る。今回はこの市販折り込みパイ生地と 年中手に入るレモンでタルトを作ってみよう。作り方もむずかしくないし調理時間も短かく、誰にでもできるタルトです。
まず、パイ生地を空焼きする。オーブンの目盛りを5(160度)に合わせて点火。直径28センチのタルト型にバターを塗り小麦粉をはたいておく。ここへ生地をのせ、手で縁をしっかりとおさえつけるようにしてから、底をフォークで突っつく。パイ生地が包んであった硫酸紙を型の形に合わせて切って敷き、その上に生地が盛り上がらないように、乾燥白インゲン豆1キロを均等に入れる。これをオーブンで10分ちょっと焼く。 さらにインゲン豆と硫酸紙をのぞいて、5分ほど焼く。
この間にタルトの中身を用意する。ボールに卵7個をとって割りほぐす。砂糖120グラムとレモン4、5個分の搾り汁を加え混ぜ合わせる。僕は細かく刻んだ皮少々も加えることにしている。最後にバター大さじ2杯を溶かして混ぜ入れる。
オーブンの目盛りを6(180度)に上げておく。空焼きしておいたパイ生地にこの卵とレモンジュースのミックスを流し入れ、熱くなったオーブンに入れる。10~15分でタルトの中身に火が通る。焼き色がついてしまう前に取り出し、すっかり冷めてから味わいましょう。薄く輪切りにしたレモンを飾りにしたいという人は、表面がかたまりかけてきたというときに並べます。デザートだけでなく、ティータイムのお供にもいい。(真)
●折り込みパイ生地を使ったフリアン
挽き肉やソーセージ、チーズなどを折り込みパイ生地で挟んでオーブンで焼いたものがフリアンfriand。これも丸く伸ばしてある市販の生地を使うと手軽にできる。生地の真ん中から半分に、ちょうどいい長さに切った細いソーセージを並べる。ソーセージとソーセージの間の部分に、溶いた卵の黄身を塗り、生地のもう片側を折りかぶせる。ソーセージ間を指先で押さえながらくっつける。これを小さく切り分け、ツヤ出しの卵の黄身を表面に塗ったら、天板にきちんと並べ、目盛り7(200度前後)のオーブンへ。10分ちょっとで焼き色がついたらできあがり。アペリチフにいい。太めのチーズを使って、大きく作り、サラダなどを添えれば、簡単な食事になる。
●これは便利
●couteau économique
直訳すれば “経済的ナイフ” だが、ジャガイモやニンジンなどの皮むき器のこと。薄くむけるから経済的という名前がついたのでしょう。先のとがった部分は、ジャガイモの芽をほり出したりするときに使います。料理に入れるためにレモンやオレンジの皮をむくときにも便利。
●zesteur
オレンジやレモンの皮zesteをむくための専用小道具。 “経済的ナイフ” があれば別に必要ないが、浅く浅く皮がむけるようになっているので、皮の裏にある白いところ (ニガイ!) がついてこない。
●台所のフランス語|appareil
preparer un appareil pour cette tarteとあっても、タルト用の “道具” を準備するという意味ではありません。appareil には、料理、菓子を作るために数種類の材料を混ぜ合わせた “たね”、”下生地” という意味もあるのです。たとえばappareil à bavaroisとあったら、バヴァロワ用の “たね” ということ。