10月初めにハイパー、カルフールで販売された牛肉に狂牛病症の疑いのある 1頭の肉が混ざっていたというショッキングなニュースを皮切りに、狂牛病の感染度の高い骨髄が付着しやすい背肉も、腸類に次いで禁止されるかもしれないという噂が渦巻くなかで、消費者を始め養牛・屠殺解体業、卸・肉屋、レストラン等、関連業界、シラク大統領までがパニック状態。パリの大半の区や地方都市で学校給食から牛肉を閉め出す報道も絶えない。 国内消費量は4~5割減り、ポーランド、ハンガリー、ロシア、スペイン、イタリアが仏産牛の輸入を次々に中止。かつての英産牛に対するEU委の輸出禁止措置以上に仏産牛への村八分が広まりつつある。 狂牛病対策は専門家の見解を待ってからと慎重だったジョスパン首相も世論のプレッシャーに折れたよう。11月15日、当分骨肉粉飼料を全面禁止、屠殺前の検査範囲を拡大し、背肉についてはTボーンステーキを禁止する決定を発表。10月末に同じことを力説し煽動者扱いされたシラク大統領はソレミロといわんばかり。 だが、豚や鶏、養殖魚への骨肉粉も全面禁止となると、その代替物として米国産遺伝子組み換えの大豆やトウモロコシの輸入に頼らざるをえない。またリサイクルされない粉末の焼却・処理問題*も浮上。 英国は、86年に動物性飼料による狂牛病が発覚し同飼料の牛への国内使用を88年に禁止した (狂牛病18万4千頭とその疑いのある430万頭を処分)。フランスは90年に骨肉粉の牛への使用を禁止し、狂牛病に感染しないといわれる豚や鶏、養殖魚への使用を認めた。が、牛へは禁止したにもかかわらず0.3%の使用を認めた。また豚・鶏用の骨肉粉飼料が間違えて牛にやられた例も多い。 自国内で禁じられた英産骨肉粉飼料は90年以降も不正輸入業者やベルギーなどを経 (生産国ラベルを変更)、特に仏西部ブルターニュやノルマンディーの乳牛用に大量に輸入された。狂牛病例の大半は乳牛だ。乳牛は8~10年務めを果たした後、精肉用牛より安くスーパーなどに卸され、 前述のカルフールで売られた牛肉も1キロ36Fという庶民向き商品だった。 英政府が10月26日に公表した調査結果によると、狂牛病が原因の新型クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)による死亡者84人の多くは10代で、発病するまでの期間を10~30年とみて10年間に10~13万人が死亡すると推定。この数字だけで仏国民を狂牛病パラノイヤにさせるに十分。 仏国内の狂牛病例は今年だけで104頭。CJDの疑いのある患者は大半が高齢者だが99年594人、今年648人と急増。CJD認定患者は99年87件(’95:59件)、2人死亡。今年2月に死亡した女性(36)と重症患者(19)の家族が11月17日、”毒物投与、過失致死”等の罪状で英仏当局とEU委の責任を追求する構えで提訴。汚染血液に次ぐ難題、狂牛病問題とどう取り組んでいくか、ジョスパン政権にとって正念場。(君) *No.460 (00/6/15) 掲載の「狂牛病の余波」を参照。 |
フランス人の牛肉への不信感 70% すごく / むしろ心配 |