小品だが、凝りまくっている。 “Tuvalu”



 何の期待もなく観に行った映画が意外な拾いものだったりすると、凄くイイ気分だ。『TUVALU/ツバル』には、小品佳作という形容がぴったり、とってもキュートな映画だ。
 ロシアか東欧あたりの雰囲気が画面から漂う。1920年代ごろに栄えた風な、今は廃墟寸前のプールがメイン舞台。時代を超越した人達が棲息している。主人公のアントン (ドゥニ・ラヴァン) は、プールのオーナーである盲目の父のために、プールの管理をしている。彼の夢は船長になって大海原を航海すること。でも現実にはこのプール以外の世界を未だ知らない。彼は父のために、今日も沢山の人が泳ぎに来ているような環境音を流す。でも実のところ常連客は、高齢の婦人と退役船乗り、他わずかなのだ。ある日、退役船乗りが娘のエヴァ(チュルパン・ハマートヴァ←『ルナ・パパ』のヒロイン)を連れて来た。アントンの胸が高鳴る…。アントンには仲の悪いグレゴールという兄がいて、彼もエヴァに熱を上げる。グレゴールは、父もプールも捨て外の世界で成功している。彼はプールを潰して都市開発に乗り出そうとしている。その企みとエヴァの取り合いが交錯して、物語は動き出す。果たして結末は…?
 小品と書いたけど、実は凝りまくっている映画だ。字幕を読む必要も仏語を聞き取る必要もないので無声? と錯覚しそうになるが、たまに聞こえてくる言語らしきものが国際共通語の役をはたし、誰にでも分かる仕組みになっている。画像は白黒フィルムで撮影後にラボでカラー処理されている。言葉数が少ないだけにジャック・タチ風でもあり、時代も場所も定かではない分、架空の世界に浸れ、物語構成がしっかりしているのでお伽噺を満喫できる。ヴェット・ヘルマン監督の初長編。(吉)


 

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