女が語る男、男との関わりから浮き上がる女…

●Camille Laurens “Dans ces bras-là”
 カミーユ・ロランスの第7作目にあたるこの小説は今秋の話題作の一つで、すでに数々の文学賞の候補にされている。
 物語は、語り手である女性が道で見かけた一人の男に惹かれ、その後をつけるところから始まり、その男との会話、というより彼への独白、そして、父親、息子、キリスト、医者、編集者、愛人等々、彼女が出会った数々の男についての語りからなる。各々が数ページからなる数十章の中で語られるのは、様々な出会い、出来事、考察、そして男、愛。
 ロマン主義的な昂揚もなく、プルースト的繊細さもなく、引用、比喩も最小限、この小説はシンプルな文体で書かれ、軽快さに満ちている。語り手も彼女自身の感情を巧妙に、情熱的に語るわけでもなく、その語りは淡々としており、ときには滑稽さもみられる。この簡潔さがこの小説の強さだ。何の修飾もなく、女である女、そしてそんな女からみられる、語られる男たち。この簡潔ゆえに、読者には伝わるものがある。
 この小説にたいして、僕は「男」として読むことしかできなかった。僕とは別の者である女から、いかに僕もその一人である「男」がみられているのか、そして、その男たちについての語りを通して見えてくる「女」、この語り手もその一人である「女」。そうだ、この小説から浮き上がるのは男だけでなく、女でもある。男であることは女から、そして女であることは男から、わかるのだろう。
 「女」である語り手と「男」である読み手(あるいは描かれる「男」と「女」である読み手)が交わる文学の場、そして、小説で描かれる男と女の出会いが読者自身の体験・出会いと絡まる想像世界、これがこの小説の文学体験。
 僕は男、キミは女。わたしは女、あなたは男…。(樫)
*8.O.L, 2000, 304p. 120F


“Ce serait un livre sur les hommes, sur l’amour des hommes : objets aimés, sujets
aimants, ils formeraient l’objet et le sujet
du livre. (…) Je ne serais pas la femme du
livre. Ce serait un roman, ce serait un personnage
qui dessinerait justement qu’à la lumière des
hommes rencontrés.” (p. 14-15)


 

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