パリを訪れる観光客の送迎を担当するトランスファーの仕事をしているハルコさんのステュディオは、中国人街が広がるベルビルにある。ベルビル界隈は、アジア系レストラン・商店が数多くあり、アフリカやアラブ系の移民も多い地区だ。単刀直入に、ここに住んで怖いことはないの?と聞くと、「この辺は庶民的で活気があるし、なじみやすい雰囲気があるんです。和食用の食材も簡単に見つかるし、日曜も買い物ができて便利ですよ。夜遅くても、商店の明かりで結構安全なんです」との返事が返ってきた。実際、彼女の部屋は中庭に面していてとても静かだし、建物も外部の人が中に入れないようセキュリティにも配慮がみられる。 この部屋の前の住人が友人の友人。その人が引っ越すのとハルコさんがパリにやってくるタイミングが重なり、「とりあえず3カ月」のつもりで入居。居心地のよさと、月日が経つうちに増えた荷物で身動きがとれなくなり今年で4 年目だ。 部屋に入ってすぐに目につくのが、でっかい目覚まし時計。トランスファーという仕事柄、朝5 時起きもままあるという彼女らしいモノ。そして、棚やテーブルの上に写真やぬいぐるみ、天使のレリーフなどの小物がずらりと並んでいる。これらは一見ガラクタにも見えなくもないが、本人には大切なものばかり。ワインのコルクや小さな人形の一つ一つにも思い出が詰まっている。そのうえ、今年一時帰国した際に買ってきた携帯電話用のビニールソファなどますますモノは増えるばかり。冬の必需品、便座カバーも日本の100 円ショップで手に入れてきた。 この住まいの唯一の難点は水廻り。入居時からバスタブの蛇口から水漏れがあったのだが、そのままにしておくと、12万フランの水道料金の請求 (!!) があったと大家さんが訪ねてきた。当然、すぐに修理をしてもらったのだが、以来、水道の調子が悪い時はすぐに大家さんに知らせ、修理の人を呼ぶようにしている。 近所にはシリアルをたくさん使ったおいしいパン屋さんがあり、自然志向のある彼女のお気に入りの一つ。ハルコさんのここでの暮らしはまだまだ続きそうだ。(里) |
ベッドルームから顔をのぞかせたハルコさん。 |
パリを見下ろす公園と「大気の家」 ●Parc de Belleville et Maison de l’Air 地下鉄ピレネー駅から、72番地でエディット・ピアフが生まれたというベルビル通りを下り、ピア通りを左に曲がると右手にパリの展望がひらけてくる。ベルビル公園は丘の斜面を活かした公園なので、ピア通り側から入って下りながら居心地のいいベンチを探すのがよさそうだ。意外に広い敷地には、ピノ・ムニエール種とシャルドネ種のブドウ園があったり、岩山や洞窟、アスレチックが楽しめるウッド・ヴィレッジなど子供たちが喜びそうな施設も。バラエティーに富む樹木もこの公園の特徴。オリーブやりんご、プラムなどの果樹、菩提樹やアカシアなど400 種ほどの木々の緑が心地よい。 丘の上部に併設された “大気の家” は、パリの大気に関するさまざまなマメ知識を収めた博物館。例えば、セーヌ川岸で古本を売っているブキニストや、地下鉄のホームや朝市を、音と匂いで体験するブースがあったり、ハエの羽ばたきは1 分間に何回 ? とか、ナメクジは肺呼吸か ? といった設問への答えが分かりやすく展示されていて子供のみならず、大人も楽しみながら学べる空間なのだ。(里) *Maison de l’Air : 27 rue Piat 20e 01.4328.4763 火-日/13h30-17h (10月~3月) 入場料 : 22F (18-60歳) / 11F (11-17歳) / 5F (6 -10歳) |
素晴らしい眺望。右に「大気の家」が見える。 |