毎年5月になると、アルティショーに狂う。 Barigoule de petits artichauts

 ヴィオレvioletというプロヴァンス産のアルティショーが八百屋の店頭に並ぶと、もう我慢できない。5、6個が葉ごと束ねてあるが、茎が固くしっかりとしていて、その切り口がみずみずしいものが新鮮。アルティショーがなるべく小さめのものを2束買ってくる。
 バリグールbarigouleと呼ばれる南仏の名物料理を作ってみよう。まずボールに水をたっぷりとりレモン1個分の絞り汁を加えておく。アルティショーの茎は3センチほどを残して切り落とす。花弁 (葉feuille) をふた回りほど手でむしり取ったら、全体の1/2くらいのところに包丁を入れて、ザクリと先を切り落とす。大きめのものだと二つに割って、チクチクする繊毛foinをえぐるようにしてとりのぞく必要があるだろう。茎を一皮むき、残っている花弁の付け根を面どりする要領で切り取ったら、黒くならないように、用意しておいたレモン水に漬ける。
 ニンジン2本と小さな新玉ネギ5、6個を薄くせん切りにする。アルティショーを重ねずに並べることができる大きさの鍋に、オリーブ油を大サジ3杯とってニンジンと玉ネギを炒める。玉ネギが透き通ってきたら、二つに割ったニンニク2片と、ローリエの葉1 枚とタイム少量を加え、しばらく炒める。ここで、アルティショーを加え、白ワイン半カップ、さらにトリガラのスープまたは水をヒタヒタちょっと手前という感じに加え、軽く塩、コショウして煮ていく。
 20分もするとアルティショーが柔らかくなるから取り出し、冷めないようにしておく。残りは煮汁が半分以下になるまで煮詰めていき、新たに好みの量のニンニクとパセリのみじん切りを加え、コショウをたっぷり挽き入れ、火を止める。最後に、バジリコ1束分の葉をみじんに切ってアルティショーの上からかけ、さらにオリーブ油をかけ回せば、「プロヴァンスの初夏」という気分になるアントレです。( 実)

ハーブ・スパイス探検
●ail

 アジア原産で、その薬効が大切にされて、中近東、イタリアなどを経て、フランスに入ったニンニクは、ハーブともスパイスともいいがたい食材かもしれないが、フランス料理一般の味付けに欠かせなくなった。特に南仏ではオリーブ油と並んで味の決め手。
 以前は、初夏に収穫されて編み上げられたニンニクtresse d’ailを買って、涼しく風通しのいいところに吊して保存したものだが、最近は南米からの輸入も増えて一年中出回っている。南仏で栽培されている、白あるいはやや灰色がかったail blancとオーヴェルニュなどで栽培されている小振りで紫色がかったail rose があるが、どちらにせよ、皮がよく乾燥していて、身がしっかり締まったものを選びたい。
 生のままの使い方としては、ニンニクにナイフで細かく切れ目を入れてからパンやサラダボールにすりこんで香りを移したり、細かく刻んでサラダドレッシングに入れたり、すりつぶしてタップナードやアイオリソースに加えたりする。なお、ニンニクに包丁の柄をあてて静かに押さえつけてつぶすと簡単に皮がむける。芯にある緑色の芽は消化が悪いといわれていて、生で食べるときは二つに割ってから取り出した方がいい。

 羊をローストするときだけでなく、タイなどの魚を丸ごと焼くときも、ナイフで切れ目を入れてから薄く切ったニンニクを刺しこむと香りがよくなる。

 みじん切りあるいは輪切りにしたニンニクを炒め料理に加えるときは、早くから入れると焦げついて苦くなるので、最後の方に入れた方がいい。そうでなかったら丸ごと入れて、香りが油に移ったら取り出すことにしよう。

 煮込み料理に加えるときは押しつぶしたものを丸ごと加えるか、ニンニク風味を柔らかくしたいなら、皮付きのまま加えて、適当なころ合いに取り出せばいい。