ベルギー人作家ノトン氏が日本企業での体験を語った「Stupeur et tremblements」に、作者は誇張しても本にしたい辛い経験をしたのかも、と思うようになったのは、パリの日本企業某社でのあるフランス人の経験を知ってから。
昨年アジアでの貿易語学留学から戻った彼は、それが生かせる仕事を探したが簡単には見つからず以前の会社に面接に行ったら採用通知が届いた。同時にパリの小さな日系貿易会社に面接に行くとあっさり採用が決まった。二カ月の待機後、給与は研修程度のわずかな額だが目指していた職種で、社長も彼に様々な希望を語ったので就職を決めた。
しかし、仕事を始めた五日後、突然「解雇」を言い渡された。「気が回らない君は社に合わないので採用を取り消したい」。何の失敗をしたわけでもない彼は、何が起こったのか理解できず「全てが悪夢としか思えない」。仕事を始めた当時社長は日本に出張中で彼の面倒を見ていたのは共同経営者の女性上司。社長は日本から戻った翌月曜日、何の話し合いもなく彼を解雇した。理由は女性上司の気性に合わなかったこと。それは日本人と仏人のメンタリティー、行動の仕方の違いによるズレからくるものだろう。十年来パリで営業している会社がそうした面を考慮せずに仏人を採用?「何人もの人を見ているから使えるかどうかすぐにわかり辞めてもらった」と社長。それは面接時に分析すべきだ。彼の落胆、心の痛みは言葉に余る。この体験と、なぜか挨拶もろくに返さなかった日本女性上司のことを彼は一生忘れることはないだろう。信用できない、冷たい日本人のイメージが、彼、家族、彼の友人達の心に植えつけられたのでは。(匿名)