私、パリでまた一から始めます。

 人懐っこい笑顔とトレードマークの黒い帽子でひょっこり現れた沖至さんは、ジャズをこよなく愛するミュージシャン。トランペットを演奏して、日本、ドイツ、フランスと飛び回っている。
 リヨンに10年以上も住んでいたのだが、今年になって70年から85年まで住んでいたパリに戻ってきた。引っ越しの動機は、「あっという間に時が過ぎて、気がつくと頭が真っ白になっていたなんてことになりたくなかったから」。あえて暮らしやすいリヨンを離れて、またパリで一から始めようということなのだそうだ。こうしていつでもミュージシャンとしていい状態を保っていたいという、音楽に対しての真摯な姿勢がうかがえるのもいかにも沖さんらしい。
 何事に関しても理論的なフランス人に対して、日本人のものの捉え方は感覚的。そんな日本的な感覚を大切にして、例えば能のような「間」のある日本人にしかだせないリズム、日本人にしかできないジャズを追求する。「こっちに住めば住むほど日本が好きになります。おかげで日本食ばかり食べているし、やはり味噌や梅の味は大切です」
 今一番の夢はというと、「トランペットのコレクションを一堂に集めて、そこでブラス奏者を呼んでコンサートも開けるような小さなミュージアムをパリに作りたい」のだそう。そう、沖さんは、300を越えるトランペットの収集家でもあるのだ。引っ越しの際、トラック3台で運んだそのコレクションの中には、最古のトランペットといわれる1820年製作のものも。そして、なにより、自分の手でピストン以外の部分を作り上げた、世界にただ一つというトランペットの数々がある。これらは単に形がユニークというだけでなく、例えば二つのアサガオがあるものは、演奏の途中で即座に音を変えることができたりと、他にはない機能を兼ね備えていたりするのだ。ブラスバンドで演奏していた学生時代から、ずっとトランペットの真鍮の香りが好きだったという沖さん、今度のコンサート、素晴らしい演奏を期待しています。(里)
*沖さんの演奏を聴きたい人は、3月18日 (土) 20h30~、エスパス・ジャポンに集合!料金50F