Gratin de merlan
ブルターニュやノルマンディーで獲れるメルランmerlanは、タラ科にしては小さめの魚で、丸ごとあるいはおろし身の形で、一年中魚屋に並んでいる。値段も安いからどんどん使いたいところだが、身がこわれやすいのが欠点で、鍋にしたりしたら災難、身が粉々になってドロドロ鍋。これを逆用して、魚のスープを作るときにメルランのおろし身を加えれば、煮くずれしてちょうどいいコクになる。今回は身をほぐしてからマッシュポテトといっしょにグラタンです。
まずクール・ブイヨンを準備する。水3カップに白ワイン1カップ、薄く切ったニンジンと玉ネギ少々、レモン半個分の絞り汁、ブーケ・ガルニを加えて塩、コショウし、しばらく煮詰めてから冷まして漉せば準備完了。メルランのおろし身を4人分として600グラム、底広の鍋に並べ、クール・ブイヨンをヒタヒタに注ぎ、中火にかける。沸騰したら即座に火から下ろし、15分ほど置いておく。この間に、薄く切った玉ネギ1個とニンニク2片を軽く色がつくまでバター炒めしておく。インスタントで構わないからマッシュポテトも用意する(一袋125g+牛乳1/2l+水1/4l+塩小サジ1杯+ナツメグ少々) 。
魚をフライ返しなどを使って取り出し、身をほぐしながら丁寧に小骨をのぞきましょう。バターを塗った天火皿にこの魚のほぐし身を一面に並べ、軽く塩、コショウをして、レモンの絞り汁を振りかける。その上に、玉ネギとニンニクを置き、さらに刻んだパセリをたっぷりと散らす。コリアンダーやバジリコなどと半々にしてもいい。最後にマッシュポテトで全体を覆います。こうすると、魚がパサパサしないし、香草の匂いも封じ込めることができるからだ。おろしチーズを一面にまぶし、バターの小さな固まりをチョンチョンと置いて、熱くしておいたオーブン(目盛り7 ~8 /240度) へ。
きれいな焼き色がついたら完成。熱々をフーフーいいながら味わいます。(実)
●merlan à la meunière
メルランのムニエルもうまい。小さかったら丸ごと、大きめだったら三枚に下ろし、両面を牛乳にさっと浸してから、塩、コショウし、小麦粉をまぶす。フライパンにバターをとり、泡立ったら魚を入れ、中強火で焼く。両面にきれいな焼き色をつけたいものだ。皿に盛り付け、パセリをたっぷり散らし、ゆでジャガとレモンを添える。好みでは焦がしバターをかけてもいい。
●purée de pommes de terre instantanée
マッシュポテトを乾燥して細かなフレーク状にしたもので、日本でもお馴染みのインスタント食品。ビンジュ種bintjeなどのジャガイモを茹でてからマッシャーで丁寧につぶしたものには味で負けるけれど、時間がないときには大いに助かる。我が家の子どもたちには、インスタントの方が本物よりもきめが細かいし味もあっさりしていると人気がある。一袋125グラムで4 人分のマッシュポテトができる。水1/2l+牛乳1/4lを鍋にとって熱くし袋の中身を加える、と書いてあるのがふつうだが、水と牛乳の量を逆にした方がおいしくできる。ナツメグをおろして加えると香りがよくなる。バターを足してからかき混ぜすぎると粘りが出てしまうので注意したい。ところが、料理好きの友人はマッシュポテトは粘りが大切と、たっぷりのバターを加えてから弱火に戻して、しばらくの間混ぜ続ける…。
●グラタン用のチーズ
グラタンは、おろしチーズを表面に振りかけて、色よく香りよく焼き上げるが、きまったようにグリュイエールチーズを使うのはアイデア不足。グラタンの中身次第で、コンテ、ルブロション、ラクレット、サン・ネクテール、各種山羊チーズ、ロックフォール、あるいはカマンベールといろいろ工夫したい。カマンベールだけでは味が強すぎるという人は、たとえばグリュイエールと半々にすればいい。柔らかくておろしにくかったら、皮をとってから薄く切ってのせるだけだ。「このチーズはな~に? ずいぶん香りがいいねえ」とグラタン料理に幅が出ます。