中学・高校を蝕む校内暴力。

 ここ数年来1月、2月になるときまってマスコミが大きく扱うのが「校内暴力」。とくに中学・高校での暴力は今日、フランスの社会問題のひとつになりつつある。
 今年に入ってパリ郊外の中学で生徒が持ち込んだ火炎ビンが爆発、ゆすり後の殺人未遂、男子生徒3人が女子生徒をいじめライターで顔を火傷させる、モンペリエでも職員への暴力など、各地で校内暴力事件が相次ぎ、数校で教師たちがストライキを決行、父兄も校舎を占拠するなど、緊迫した状況が報道されている。
 全国に約7500校ある中学・高校・職業校のうち問題校とされているのは約300校。パリ地域を含め大都市郊外の、失業に蝕まれ経済的に不安定な家庭が集中し”ゲットー化”する団地にある学校ほど校内暴力がめだってきているといわれる。10年以来各教育相が次つぎに対策に対策を重ねてきたものの、ほとんどが指導補助員や保健婦を何人増やすかという数字的な対策ばかりで、根本的な解決策にはほど遠い。
 1月26日、アリーグル教育相は98年の対策案(1)に次ぐ対策案(2)を発表。その中でギョッとさせられるのは、「激しい校内暴力が頻発している学校の周辺に警官を配備し、校長の通報後ただちに警官が校内に出動できる態勢をつくる」という、教育相と内務相のはき違えではないかと思える官憲動員の校内暴力退治法だ。生徒の監視や指導にあたる補助員については、 2年前に6万5千人を採用したのに次ぎ2万人を新たに採用し、すでに問題地域とされた9学区のほかに、ヴェルサイユ、ストラスブール、ルーアン、リール、トゥールーズなどの学区も問題地域とし、指導補助員を集中的に送り込む。また「道徳教育と市民教育」に力を入れ小学校から必須とする。そして、いままで教師、学校ごとにまちまちだった処罰規定を明確にし統一化。授業中の怠惰から校則違反、言葉による暴力、不登校、破壊・傷害までを体系化し、規律委員会は処罰規定にそって対処すべしと、教育相は校内暴力に対し”Zero Tolerance お情け無用”の姿勢を全国にいきわたらせる意気込みだ。
 80年代以降バカロレア、エリート校への路線に乗せるためにあるような中等教育で、落ちこぼれ生徒は”はきだめ”ともいわれるクラスに追いやられ、規律委員会にでもかけられれば85%は退学処分を受ける。数年前までは問題生は個々の問題として扱われてきたのが、最近は数人まとめて退学させ、すこしでもバカロレアの合格率を引き上げようとする極端な高校の例も出てきているという。
 親の失業や離婚、家庭内暴力などで不安定な日常を強いられる生徒のうちどのくらいが学業に励み進学の希望に燃えることができるだろうか。問題生が、落ちこぼれから暴力に移る前に、彼らの内なる叫びに親、教師たちははたして耳を傾けてきただろうか。校内暴力は、今日の社会が孕むウミともいえる。(君) 



98-99年度パリ地域中・高校の退学処分
4544件 規律委員会取扱い件数 
3873件 退学処分
高校での処罰理由(パリ市内)
26% 暴力
24% 教師への攻撃的態度
15% 言葉による暴力
12% 不登校
* Le Monde : 2000 /1/ 23-24

 

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