都市の記念碑をギャラリーに。 Thomas Hirschhorn展

 トーマス・ヒルシュホルン (1957年ベルン生まれ、1984年よりパリ在住) は1997年末、造形美術部門のケルン国際賞に選ばれたが、メセナが選考委員会と対立して受賞者の選択に異議を唱えたため、結局賞は授与されずに終わってしまった。しかしながら、その栄誉を称えようとルドウィグ美術館で展覧会が行われ、この事件により、彼の作品はヨーロッパのアート・シーンで高い評価を得ることになった。
 彼は、こうした経緯を現在の美術界を支配している傾向への批判であると考える。 「希望や指標を与えることではなく、尊大なスピーチを嫌悪し権力に取り憑かれた人々を軽蔑することが必要だった」
 この作品 “Sculpture directe” は、ダイアナ妃追悼碑にすり変えられた、アルマ橋の記念碑のレプリカである。”記念碑”の概念さえも嘲るそのパロディーは、今日公共の場に設置される彫刻が呈する意味や役割を問い直す。ヒルシュホルンは、このオブジェの馬鹿馬鹿しさ、お涙頂だい的性質を、アルミホイル、ガムテープ、ゴミ袋のビニールといった材料で強調し、都市空間における”モニュメント” が持つ公的使命に全く適応しないギャラリーという場所で、その合目的性に疑問を投げかける。さらに、作品を汚しているような貼紙や落書きが「模造品」といった感じを与える。我々が<彫刻>に対して抱いている通常の価値や基準は、ここでは何の意味もなさない。様々な視覚的エレメントは不協和音に満ちている。例えば、壮大なスケールと軽く弱々しい材質とのちぐはぐさ。そこら中がサインと碑銘だらけに異常に肥大したその彫刻は、我々の意識を表面に引き寄せ、各々の経験をただの視覚的な現象に帰してしまう。
 この作品のねらいは、価値転換や矛盾を引き起こしたり、制度化された商業的構造を修正することにあるのではなく、むしろ、いかにも分かりやすいイメージを創り出して、価値転換を納得できるものにすることである。(マルク/訳 : 仙 )
*Galerie Chantal Crousel :
40 rue Quincampoix 4e 10/20日迄


ムスタファ・ディメ展
 昨年46歳の若さで逝ったセネガル人作家へのオマージュである。
 彼は、木や針金、布、荒縄、釘といった、アフリカの伝統芸術が慣れ親しんできた素材を自在に用い、実に自由に、軽やかに作品を生み出していった。例えば、流木。櫂の残骸。そういうものを彼は、ほとんど直観的に拾い上げる。そして、ある時はその物自体のもつ美しさをいたわるようにして、ほとんど手を加えずに呈示する。また一方では、木を継ぎ、釘を打ち込み、針金を絡め、あるいはタールで肉付けして、力強く独自のフォルムを造り上げる。こうして、自然の形態と荒削りな手仕事は一体となり、見る者を自らの神話の中へと導いていく。彼はその天性の造形感覚によって、素材と対話することを知っていたのだ。作品には確かに魂が宿り、どれもが詩的喚起力に満ち、そして紛れもない彼自身の言葉となっている。
 彼は、自分の作品がアフリカン・アートとして括られることにひどく反発していた。しかしそこには明らかに、現代の硬直した美術が失ってしまったものがある。全身で感じ、創造することの喜びである。それが作品に命を与える。芸術とは本来、そういうものだったはずなのだ。(知)
* “Moustapha Dime
Salle St-Jean de l’Hotel de Ville de Paris:
5, rue Lobau 4e 11/21迄 (月休)

●Christian BOLTANSKI
<Paysage>シリーズから。10/25迄
Galerie Yvon Lambert: 108 rue Vieille du Temple 3e
●Jean-Marc BUSTAMANTE
<写真絵画>と自ら称する作品。郊外の虚無な風景。11/1迄
Centre National de la Photographie: 11 rue Berryer 8e (火休)
●William KENTRIDGE
デッサン、ビデオ、マリオネット。南アフリカ人アーティストの作品。11/13迄
Galerie Marian Goodman: 79 rue du Temple 3e
●<Les Champs de la Sculpture 2000>
29カ国、52人の現代アーティストの作品がシャンゼリゼ通りに。半数は本展覧会のための新作。11/14迄
●上記の展覧会に出品する2作家。
*Katsuhiko NISHIKAWA展 11/15迄
Galerie Philippe Casini:13 rue Chapon 3e
*Erik DIETMAN展 11/7迄
Centre Culturel Suedois:
11 rue Payenne 3e
●CHARDIN (1699-1779)
静物や庶民生活を素朴で自然な構図と色彩で描く18世紀フランスの代表的画家。20年ぶりの回顧展。11/22迄
Galeries National du Grand Palais(火休)
●Henri MICHAUX (1899-1984)
ミショーのふたつの展覧会。アンフォルメルな絵画は象形文字を思わせる。
*Galerie Berthet-Aittouares:
29 rue de Seine 6e 11/13迄
*Galerie Marwan Hoss:
12 rue d’Alger 1er 12/17迄
●<Masques Africains>
スイスのBarbier-Mueller美術館が所蔵するアフリカのマスクを展示。11/28迄
Mona Bismarck Foundation: 34 av. de New York 16e
●<Symboles en Fleurs>
<花>をテーマに集めた1900年頃の作品。Mondrian、Van Goghの絵画や、同時代の家具、陶器など。11/28迄
Institut Neerlandais: 121 rue de Lille 7e
●Roger PFUND
現行のフランス・フラン札をデザインしたスイス人PFUNDの絵画、グラフィック、デザインワーク。12/12迄
Centre Culture Suisse: 32-38 rue des Francs-Bourgeois 3e
●<Une Passion Francaise>
Le baron GrosからLartigue, Man Ray, Tabard, Cartier-Bresson…。1850年から今世紀までの貴重な写真を集めたRoger Therondのコレクションから240点。Maison Europeenne de la Photographie :
10/6-1/9迄 5-7 rue de Fourcy 4e (月火休)
●<Le Parfum de l’Encre>
明から清朝15-19世紀の中国絵画52点。12/30迄 Musee Cernuschi: 7 av. Verasquez 8e (月休)