★★★Serge Utge Royo
Association “Mots & Musiques” は、長い間、パリの郊外セヴランの町を拠点に、詩や言葉を尊重するシャンソンの伝統を若者達に広める活動を続け、マリ=ジョゼ・ヴィラールなどの優れた歌手をスターにした。
ミシアと並ぶ仏産ファドの新星ベヴィンダも、この協会から成功している。その彼女に続く注目株が、カタロニア出身のセルジュ・ウジェ・ロヨ。
彼の特徴は、カタロニア訛りの天性の美声。彼が書いた崇高なテキストにごまかしのないステージ。絶対に聞いてほしい歌手です。
5日~9日。水~土 /20h30、日 /17h。120F (Fnac / Virgin で前売り中) *L’Europeen : 3-5 rue Biot 17e 01.4387.9713
★★★★ Juliette Greco
6年前のオランピア劇場公演では、「わたしのミッキー」や「うなぎの心」など、バーイアのカイタノ・ヴェローゾやジョアン・ボスコといったブラジル音楽のスターの曲 (詩は主にエチエンヌ・ロダ=ジル) を披露しファンを喜ばせたグレコ。
今回のステージでは、脚本家・作家として知られるジャン=クロード・カリエールのテキストを中心に歌う。公演を前にすでに新アルバム “Un jour d’ete et quelques nuits” をリリース。
25日~30日。火~土/20h、日/15h。143F~220F。 *Theatre de l’Odeon :1 place Paul Claudel 6e 01. 4441.3636
音楽を聞くときに予備知識なんかいらない、というのもよくわかる。最初は、たまたま友人の家のオーディオやラジオから流れる音楽にショックを受けて、付き合いが始まるものだ。でも、少し聞き込んでみようかなあという時には、雑誌の記事や本が大切なガイドになるが、フランスは音楽関係の本が少ないし、あっても専門的すぎたり、高すぎたり、という状況だった。
その点、最近出版が始まった10フラン文庫 “Librio” の音楽シリーズはうれしい存在だ。現在まで、ジョルジュ・ブラッサンス、ゲンスブール、ケルト音楽、キューバ音楽、コルトレーン、ボブ・マーリィ、デヴィッド・ボウイ、テクノが出た。詳しい人には物足りないかもしれないが、100ページ未満の量の中に、よくこなれた情報が掲載されている。関係書籍やCDのリストも、現在簡単に手に入るものに限られているが、よくできている。(真)
●Joe McPhee
ジョー・マックフィーがサックスやコルネットから発する音は、どんどん肉声に近づいている。それはアイラーやコルトレーンが、ジャズというフォーム以前の肉声を探していたことの延長線上にある。マックフィーは、アイラーのサウンドを蒸留したような美しく豊かな肉声で、エモーションの微妙な動きを表現。共演者のアイデアを受けて、それをふくらましたり、新方向を与えたりしながら、共演者に送り返す。そしてクライマックスに近づくと、フッと身を引いたりするところもたまらない。現在のジャズ界の頂点に立つミュージシャンの一人だ。
今回は、”Marteau Rouge 赤いハンマー” (ギターのジャン=フランソワ・ポボロス、シンセのジャン=マルク・フサ、ドラムスの佐藤真) と共演。
10日/20h30 80F/60F (学生、失業者)
*Instants Chavires : 7 rue Richard Lenoir Montreuil 01.4287.2591 M! Robespierre
*同じメンバーで20日はVandouvre-les-Nancyの “Musique Action 99” で、22日はBesançon で公演。
●ドビュッシーのアルバム2枚
ソプラノ歌手、奈良ゆみがドビュッシーを歌ったCDが出た。アルバム全体に、シェーンベルクやメシアンなどのレパートリーを開拓してきた彼女ならではの覚悟がうかがえる。僕らが聞き慣れてきた、モノクロームな夢や波の動き、肉体を離れた法悦ではなく、色彩豊かで、劇的、時には肉感的ですらあるドビュッシーだ。
やはり発売されたばかりのアリス・アデールによる前奏曲第一集もユニーク。ベネデッティ・ミケランジェリのように色彩のニュアンスを追求するのではなく、硬質で透明感あるピアノで、ドビュッシーの作品が秘めているコントラストを引き出し、バルトークに通じる現代性を表現している。「西風の見たもの」や「沈める寺」が傑作だ。(真)