カウリスマキの作品も北野の作品も台詞に頼らない。 Juha / Jugatsu N° 435 1999-04-15 日本でも人気のあるフィンランドのアキ・カウリスマキの新作『Juha』は白黒の無声映画 (伴奏入り) だ。お話は単純な(!?)三角関係… 田舎で幸福に暮らす農民夫婦の前に現れた町のダンディー。男は言葉巧みに農婦を口説き、ナイーヴな女はよろめき (死語?)、夫を捨てて男について町へ。しかしそこで彼女を待っていたものは…。そして残された夫は…。 『Juha (ヒロインの名前)』は今世紀初頭のフィンランドの小説で、すでに3回映画化され、オペラにもなっているというので、ご当地では誰でも知ってる類に入るのではないだろうか。それを敢えてまた映画化するところにカウリスマキのチャレンジ心を垣間見る。言葉の処理に逃げない映画。映画が本来もっていたエネルギーに賭けて、シンプルで力強い映画が出来上がった。白黒画面に溢れる北欧の柔らかい光が美しく、本当に昔の映画を観ているような錯覚にとらわれる。 北野武の映画も台詞に頼らない映画である。「絵画を観た時の感動、一枚の絵の前に何十分も立ちつくすような感じで、映画が成立すれば素晴らしい」と本人も語っている。今度『Jugatsu』という仏語題で公開される『3−4 ×10月』は、90年公開の同監督の2作目。北野流映画スタイルの黎明期の作品で、非常に新鮮である。ギャグも冴えまくって可笑しい。力んでないのがよく分かる。ビートたけしが、もうメチャクチャな沖縄のヤクザを演じ、東京から来た若僧二人を翻弄する。でもこれは映画の第2部で、第1部では東京の草野球チームを軸としたすったもんだが展開する。主役の柳ユーレイと彼の友人役ダンカンの冴えない若者振りが忘れがたい。ブレーク前の豊川悦史も見れる。世界の巨匠になっちゃった監督の”それ以前”を、今観直す感慨…。 (吉) Recommandé:おすすめ記事 原初的な感情こそが映画製作を支えた。 Miranda – Opéra シェイクスピアの女主人公、現代に現る。 消費社会への警鐘的作品。”99F” 映画『えんとつ町のプペル』8/17(水)フランスで公開。 シャンゼリゼで屋外シネマ!(の鑑賞チケットを当てよう)。 パリで、たけし再ブレーク。 『アキレスと亀』