兵士たちの声が聞こえる。


“…une nouvelle torture vient aussi
s’ajouter aux autres : depuis que le soleil s’est levé, les mouches attirees par l’odeur du sang s’acharnent après moi, elles sont si méchantes que je ne peux m’en debarrasser.”
● Paroles de poilus

   poilus は第一次世界大戦で戦った兵士たちのこと。この本には、ラジオ・フランスの呼びかけで、フランスだけでなくドイツからも寄せられた兵士たちの手紙8000通の一部がおさめられている。
 「もうひとつの苦しみが加わった。太陽が昇ってから、血の匂いに引きつけられた蝿が執拗に僕を襲ってくる。とてもしつこくて追い払うことができない」と書いているのは、重傷を負って塹壕に置き去りにされ、孤独な一夜を明かしたデジレ・ルノー。彼はこの後ドイツ軍の捕虜になり終戦を迎える。
 腐ってふくらんだ死体脇で仮眠をとる恐怖、荒れ果てた麦畑を前にした悲しみ、無実の罪で反乱兵と見なされた兵士が妻に当てた処刑前の絶望の叫び、そんな反乱兵の処刑を目の当たりにした怒り、休暇の時に見たマロニエの緑の美しさ…
 ドイツ軍兵士のヘルメットをお土産にとねだる息子に、「今は彼らからヘルメットをはずす時期ではなさそうだ。すごい寒さだから風邪を引いてしまうだろう。それに、同じようなことをドイツのこどもがねだって、お土産にもらったヘルメットがおとうさんのだったら、どうする? かわりにサクラソウの押し花を送ろう」と書いたマルタン・ヴァイヤグーは、1915年8月25日に戦死している。
 こんな兵士たちの肉声に、レマルクの「西部戦線異状なし」やバルビュスの「砲火」以上の感動を受けるはずだ。

(真)

 


 

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