マンハッタンに独り住まいのスーは、静脈が透けて見えそうな白い肌、さまよう視線、なにかをいいたげな厚い唇、どこか危うい美しさを持っている。40歳くらいだろうか。失業中で部屋代もたまり大家からの催促が厳しい。そんな彼女に惹かれる男たちはあとを絶たず、スーも行きずりのセックスに燃え上がる。でも、それだけ…。すぐそこに孤独からの出口がありそうだが、スーの救いを求めるかすかな仕草や言葉に、男たちは気づかない。そんな彼女の表情のディテールを丹念に重ねながら、アモス・コレック監督は、バーバラ・ローデン (カザンの妻で女優だった)の “Wanda” やカサベテスの “Woman under the influences” 以来の、胸に食い入るような女の肖像を創り出した。アルツハイマー病の母に電話するシーンが、見ていてツライ。
って感じで、作家映画の秋が始まる。先月23日に公開されたロメールの新作、十年がかりの四季物語の完結編「Conte d’automne」は、ローヌ地方で葡萄栽培を営む未亡人の夫探しを語る。季節を映画で語れる彼、その語りは19世紀ロマン的でもある。場所もジャンルも変わり、先月中旬に公開されたハル・ハートレーの「Henry Folle」は、NYのロックスターな(?)詩人の誕生を描く。ラストシーンの疾走はカラックスの「汚れた血」を思わせ、泣いてしまう。また、いよいよ映画に転向か(!)の “本当の” NY作家ポール・オースターの「Lulu On The Bridge」(7日公開)は “賢者の石”をめぐる愛とサスペンス。これに、ドパルデュー Jr が覆面作家の役で主演する、未公開のカラックスの待望の新作「Pola X」が加われば言うことなしだよね… 。