一歩入ったとたん、その異様さに圧倒されましてん。散乱するガラクタ、山と積まれたエロ本、悪臭を放つゴミ。そのアトリエの主の名は山路清美。存在そのものがギャグである。敗戦の翌年、民族悲劇の結晶として鹿児島に生まれた氏は、77年その彷徨える生き方に疑問を持ち、妻子をほったらかしてこのパリへとやって参りました。
彼の作品はというと、ポルノ雑誌、チューブにランプ、プラスティックやら紙やらわけのわからん物をとっかえひっかえくっつけたオブジェであり、時には十字架やマリア像なんかもあったりして、本当にようわからん!
≪僕の表現したいのはビンボー芸術なり!≫ そらまたいったいなんでっしゃろ?
ああ、僕の嫌いな“とり澄まされた社会”に対する叫びさ。しかもとびっきりナンセンスなやつでね。例えばポルノだが、これは常識上いやらしいとされているもんでね、これを使って表現する。芸術の価値を低下させるんだ。もちろんズバリものだぜ、あっはっはははー。いやしかし、こんなんええいう人おるんですか。ええもくそもあるか!僕のやり方だ!しかしはっきりいって売れませんなぁ。すなわち食えません。ですから副業として写真で食いつないでいます。そういえばこのアトリエの中も、オブジェだけじゃなくて、写真の機材もかなりありまっせ。こっちも忙しそうやね。うむ、写真展だけでもすでに20回以上やってるからな。アマチュアじゃないよ。しかしすごい量のガラクタの中で生活してまんなぁ。どっから集めてくるんですか、こんなわけわからんもんやらきったないもん。カッパラってるとか…。失礼な、ちゃんと拾うんです。我が18区では、夜な夜な色々なものが落ちている。それを利用してアートをつくる。まさに創造さ。
18区は住み良いですかな?もちろんだよ。ああ、見給えあの丘を。モンマルトルは常に我らと共に生きている。そして何時も我らに語りかける。芸術万歳!
丘に住んで十余年。彼の情熱の源はここにあるんやて。(ダチョウ)