フラン、マルク、リラ・・・ よ、 アデュー!

 もうEU内に国境がないのに、空港で駅でレートを気にしながらそれぞれの国の通貨に換えるのは不自然、かつ不経済。物資の流通となればなおさらのこと。
 ドルが国際経済の 80%を牛耳っている今日、EUが空間だけの統合にとどまっていたなら、欧州経済は永遠にドルに依存し、ドルがカゼを引けばフランやリラ、ペセタなどは高熱を出し、平価切下げを繰り返さざるをえない。然らば、ドル・円に対抗できるEU単一の通貨を生み出すほかはない、という構想で進められてきたのがマーストリヒト協定だった。
 ついに15カ国のうちの11カ国*で、1999年 1月1日からユーロが使用されることが、5月2日、 EU首脳会議で最終的に決定された。11カ国は、主権のシンボルである自国の通貨を放棄してユーロに未来を託し、国民と共にもう後戻りできない史上初の冒険に乗り出すのである。
 一方、フランクフルトに置かれる欧州中央銀行(ECB) の初代総裁選びでは、最後までドイセンベルク前オランダ中央銀行総裁かトリシェ仏中央銀行総裁かで独仏がもめたが、結局ドイセンベルク氏が任期8年のところを4年で引退し、その後をトリシェ氏が継ぐという妥協でシラク大統領の顔もつぶされずにスタートした。
 実際には、1999年元日にはまだユーロ紙幣・硬貨は発行されず、金融取引や小切手・クレッジトカード、企業レベルでまず使用される。新紙幣と硬貨が出回るのは2002年 1月 1日から。 (Flash 欄参照)
 単一通貨によって消費者は、11カ国で販売される同一商品の価格を比較し、自国より安く消費税(TVA) も低い国の業者から購入できるようになる。企業にとって容赦ない自由競争が始まるのである。
 しかし、各国の消費税や企業税、社会保障費、また失業率、生活水準の違いがある。フランスでは有給休暇 5週間制、そして2002年以降は35時間制が一般化する。こうした加盟国の経済・社会的特殊性を無視してユーロが超リベラリズムをもって独走したらどうなるのだろうか。はたして中小企業は11カ国間の競争についていけるのか。ユーロ優先のあまり失業問題を含め社会政策がなおざりにされはしまいか。シラク大統領は、こうした疑問に対し「EUは国家の集合体」にすぎないと説くが、欧州中央銀行に全権が託されるユーロへの国民の不安を無視することはできないのである。     (君)

*独・仏・伊・スペイン・ポルトガル・オランダ・ベルギー・ルクセンブルグ・フィンランド・オーストリア・アイルランド。英・スウェーデン・デンマークは不参加。ギリシアは財政基準に合わず留保

ユーロで〈プジョー 306〉を買うと

14,640.32 euros フランス
12,915.61 euros ベルギー
12,685.26 euros ドイツ
12,672.46 euros スペイン
*1ユーロ = 6.50フラン (1フラン = 0.15ユーロ)

ユーロ豆知識
◆1999年 1月 1日
ユーロ建の口座を設ければ、ユーロでの小切手・クレジットカード、送金もできる。金融・株式市場は正月明けの 4日からユーロで取引がなされる。2002年まで向こう3年間は自国通貨との併用が可能。例えば、フランスの商店・企業はフランとユーロ価格を並べて表示できる。ただし、2002年まではユーロによる支払いを拒否することもできる。
◆2002年 1月 1日
ユーロ紙幣・硬貨が発行される。 6月末までの 6カ月間はフランも使えるが、7月1日からはフランは不換紙幣となる。フランでへそくりしている人は10年以内なら中央銀行でユーロに交換できる。預金等は銀行が自動的にユーロに換算する。
◆ 紙幣7種
500 euros (3250F)、 200 euros (1300F)、
100 euros (650F)、 50 euros (325F)、
20 euros (130F)、 10 euros (65F)、
5 euros (32.5F)
◆硬貨8種
2 euros (13F)、1 euro (6.5F)、50cents (3.3F)、
20 cents (1.32F)、 10 cents (65 サンチーム)、
5 cents (33 サンチーム)、 2 cents (13 サンチーム)、
1 cent (7 サンチーム) (*1euro=100cents)
*centは仏語でサンと発音する。100を意味する”cent”(サン)と混同しそう。
◆ユーロ紙幣と硬貨の造幣
紙幣は欧州中央銀行が発行し、硬貨は国が鋳造。現在、11カ国で流通している紙幣 120億枚と硬貨 700億個に代わるユーロ紙幣と硬貨を造幣するのに3年はかかり、自動支払機だけでも欧州内で 320万台は必要なので、その製造も大掛り。
◆ユーロ/フラン換算時の端数は?
1ユーロ = 6.54551フランで計算すると、1200フランの商品は183.33178ユーロとなり、少数第2位以下を四捨五入し 183.33ユーロに。逆の場合、35ユーロの商品は229.09285フラン、 四捨五入すると 229.09フランに。具体例として 3.8フランのバゲットパンは 0.42ユーロ。
◆給料明細書・所得申告
企業は1999年 1月からユーロで給与を支払えるが、社員にそれを押しつけることはできない。1999年からは所得税や企業税も希望によりユーロで申告できる。2002年からはそれが義務付けられるので、フランで支払われた2001年度の所得は各自がユーロに換算して申告しなければならない。2002年からは企業の会計・帳簿も完全にユーロで記帳されなければならない。またフランス・テレコムや電気・ガス(EDF/GDF)、テレビ聴取料等は、99年1月からユーロで支払いができる。
◆預金・保険の完全自由化
99年から生命保険や損害保険、定期預金等は、11カ国の保険会社・銀行の中から掛金や利率等、条件の有利なものを選べる。