異国で生活していると、体の様々な悩みを相談できる相手がいなくて、不安な思いをすることがある。そんな悩みに、医者として、そして女性の立場から相談にのってくれる一人の女医さんがいる。
庄野マリさんは、96年にパリに来て以来、専門家のアドバイスを求めて彼女を頼ってくる女性の多さを実感し、無料の電話相談を始めた。新聞に出した広告が反響を呼び、たくさんの電話が掛かってきた。医学的なアドバイスはもちろんのこと、時には話が人生相談にまで広がることもあり、一回の電話に1時間以上かけることも。セックスに関する悩みや更年期障害など、病院で診察してもらって、処方箋をもらえば全て一件落着とはいかない悩みがほとんど。「医者というのは、常に患者さんの相談にのっていたいものなんですよ。無料相談なんてかっこいいこと言ってますが、実は仕事をしたくてうずうずしていたのに、ここでは学生だから仕事ができずにいたので、こんなふうに患者さんと交流するかたちを選んだんですよ。」庄野さんにとっては、気晴らしにもなったんですね。
庄野さんの本業は産婦人科医師。仕事を一時休んで、無痛分娩と人工受精を学びにパリのSaint-Antoine病院にやって来た。「あんな小さな卵細胞が人間になる不思議に魅惑を感じるわ。だから卵巣でもイクラでも、あらゆる卵に興奮しちゃうのよ」と茶目っ気たっぷりに語っていた。帰国を今年の夏に控えた庄野さんは、残念ながらもう電話相談はやっていません。きっと日本でまた、多くの女性を支えていくのでしょうね。 (章)